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「アレキサンドライト、きらい?」
「そういう問題じゃないことくらいわかってるくせに、どうして論点をずらす訳?」
キッチンに並んで立って、パスタをゆがく妹にちくちくやられている。俺はたらこの中身を大きなボウルにとり、皮はミキサーにいれた。ミキサーで皮を粉々にしてしまえば、パスタにいれても気にはならない。
ガスコンロでは、パスタをゆがく寸胴のほかに、大きなお鍋をかけてあって、そちらではきのこ類とトマトジュース、生クリームがぐつぐついっている。味付けはお塩とこしょう、ほんの少しの白味噌だ。
たらこの皮もボウルへいれて、オリーブオイルと小さなお鍋(名前がわからない。めちゃくちゃ小さいやつ)で溶かしたバターをいれる。お醤油をふたまわしする。場合によっては塩昆布をいれたり、あらびき黒こしょうをいれたりするんだけれど、今日はやめておいた。
ボウルを妹のほうへおしやると、妹はゆがけた麺をボウルへどんどん投入する。トングでまぜてしまえば、おいしいたらこパスタだ。
揚げたてのフライやとんかつ、てんぷらは、キッチンペーパーを敷いた大皿に盛って、ローテーブルへ置いてある。
挽き割り納豆・はちみつ・お醤油・刻んだねぎ・大根おろしをよーくまぜた、納豆ソース。きゅうりのピクルス・たくあん・らっきょうをみじん切りにして、かたゆでたまごをかなりあらく刻んだものと一緒にたっぷりの全卵マヨネーズであえた、タルタルソース。ホールトマト・お塩・数種類のスパイス・飴色になるまで炒めたスライスたまねぎ・お醤油を煮込んだ、てづくりケチャップ。妹が手伝ってくれたので、ソースも完璧だ。
妹がボウルを、ローテーブルへ持っていった。妹の死角になったので、俺は収納空間からパンをとりだす。あちらの市場で買った、発酵させているタイプのものだ。これ、たらこパスタのたらこにあうと思う。
パン用のかごに盛って、ローテーブルへ持っていく。妹がエプロンを外し、俺もそうした。向かい合って座る。「いただきまーす」
「ご飯食べたら、いろいろ訊くけんな」
ぴしゃりと云われた。俺は早速、パスタを口いっぱいに含んでいたので、肩をすくめるだけにした。
たらこパスタおいしい。途中で乾燥パセリを振りかけてみたのだが、いける。予測通り、パンもたらことぴったりだった。
「このパン、おいしい」
「ああ」
「どこで買ったの? こんなおいしいパン売ってるとこ、見付けてない」
肩をすくめる。妹は数秒、俺を見るが、追求はない。妹は好奇心はあっても、礼儀がそれを上回る人間なのだ。そして、妹にとっての一番の礼儀とは、訊かれたくないであろうことを追求しない、なのである。
感想ありがとうございます。はげみになります。




