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俺は別の通りまで本気で走り、苦しくなって歩きにきりかえた。今日は走らされる日だ。走る原因は俺にあるので、自業自得だけど。
さて、どうしよう。
とっさの判断でチャタラを助けた、というか、チャタラから病気がひろまったりしないようにしようとした。それがうまくいったかどうかはともかく、とりあえずあいつは人目につかないところで隠れているだろうし、人間の被害は出ない……と思う。少なくとも、チャタラから攻撃されるひとは居ない筈だ。俺は隠れているように命令した。
とぼとぼ歩く。住宅街に這入ると、ひとどおりが減った。巡回中のふたり組のおまわりさんとすれ違い、俺は軽く会釈する。ふたりはにこっとして、帽子を触って挨拶に応じてくれた。
チャタラは使役しているから、自発的に暴れまわることはないと思う。それよりも、弱っていた様子なのが気になる。封印されると弱まるって聴いたことあるな。それが確実な話かどうかはわからないが、現にチャタラは息も絶え絶えに見えた。あのまま放置したら死んでいたかもしれない。うーん、俺はぴんぴんしてるんだけど、どういう差があるんだろう。鈍くて気付いてないだけかもしれないな。
チャタラが死んでもそこまで心は痛まないが、その死体からなにが発生するかわからないから、生かしておいたほうがいいと思った。
あっちでは人間でも魔物でも、死体ならば等しく還元される。還元されれば、魔力のもとである素になって、人間には無害になる。素は、時間が経てば、世界になじんで消えてなくなる。魔力になるんだと思う。魔力というのは目には見えない。
深く考えたいことではないが、人間含む動物の死体というのは、清潔なものじゃない。感染症の原因にならないように、きちんとした処置を施せば、話は別だが……チャタラの血液とか分泌物に、人間が触ったらアウトなものがあるかもしれない。
一部は薬材になるみたいだが、こちらの世界に居ない生きものみたいだし、あちらではすでに対処法もしくは治療法が確立されている病気がこちらでは見当もつかないものっていうこともある。効き目がすさまじいお薬が沢山あったから、その可能性は充分考えられる。
ついでに云うと、こちらには恢復魔法がない。
燕息なら簡単に治る病気が、こちらの医学では治療不可能、っていう場合も考えなくちゃいけない。そうすると、痛し痒しなんだよな。生かしておいても殺してしまっても、病気の原因になるかもしれない。
なやみながら歩いているうちに、アパートの前まで到達していた。バイクの傍で、怒った顔の妹が仁王立ちしている。




