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俺は反射的に荷物をすべて収納し、そちらへ走った。駐車場にはあんまりひとは居なかったし、大丈夫だろう。「どうしました?」
コンポストがあるところだ。お店のエプロンとふわっとした帽子を着けた、四十代くらいの女性が、へたり込んでいた。そのひとは悲鳴を上げ、持っていたごみ袋を放り出して、俺の横をすりぬけて逃げていった。
俺は彼女が見ていたほうを向いて、あんぐりと口を開けた。妹が居たら俺の顔を指さして大笑いしただろう。
コンポストの向こう、奥まったところに、チャタラが居た。
どういうこと?
どうしてチャタラ?
いやいやいや、でかいくもって、こいつか? 俺にはどちらかというと、かえるを見たことがないひとが説明の下手なひとからの情報で描いたかえるか、蝿と猿の掛け合わせみたいに見える。
体勢がくもっぽいってこと? たしかに四つ脚で、這いつくばるみたいな姿勢だ。脚の足りないくも、ならわかる。でも体? 頭? が、プリンカップ逆しまにしたみたいだから、しっかり見ればくもに見えねえよ。
チャタラを発見したので、俺は思わず、両手で頭を隠すみたいな仕種をした。こいつらは跳びあがり、踏みつぶそうとしてくる。そっか、とびあがって逃げたって、そういうことか。
しかし、チャタラはふるふる震えて、跳びあがろうとはしない。かわりに、コンポストをむなしく攻撃していた。脚でぺしぺしやっているが、コンポストは丈夫なのでなんにもならない。あんまり可愛くない、猿と蝿をまぜたような顔が、情けなくゆがんでいた。
もしかして、おなかすいてる?
様子からすると、それらしい。こちらでは食べられるものがないのかも。チャタラって、なに食べるんだったっけ。覚えてないな。
俺が対処しあぐねていると、チャタラは弱々しくしゅうと鳴いて、丸まった。心なしか毛艶がよくない。もう四肢を動かす力もないみたいだ。その姿は、どことなく憐れを誘う。そっか、こいつだって悪さをしなくても、魔につかれているから……。
「あ」
もしかして、こいつも、封印されたのかな。封印されたらこっちの世界に来るってこと? 封印、危なすぎねえか。
がちゃがちゃとなにかがぶつかる音と、あしおとが聴こえてきた。「こっち、こっち! 倉橋さんが云ってたやつ、ほんとに居たの!」
「変な病気が発生したりしたら店長の血管が切れるぞ」
「今度こそとっ捕まえてやる、巨大タランチュラ!」
おっきいくもから巨大タランチュラに格上げされている。脚の数足らんやないか。




