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ほーじくんの哀しみはどれだけだったろう。今まで、好きだと思っていた人間が、悪しき魂だったのだ。ほーじくんは優しいから、もしかしたら、俺を封印するのはつらい決断だったかもしれない。
でも、それは決して間違いじゃない。あちらの常識では正しい。俺はそれを否定するだけの根拠を持たない。だから、ほーじくんがやったことは、非難されるようなことじゃない。なにも気に病むことはない。
みんなもそれをわかって、ほーじくんの決断を支持してくれている筈だ。ほーじくんの心の傷は、長い時間かけて癒えていくだろう。その時に、みんなとの友情は、役立ってくれる。俺が居なくたって、あの子達は仲好くしているだろう。
ほーじくんが、騙されたと怒っていたか、哀しんでいたか、わからない。もしかしたら最後まで、俺を好きでいてくれたかもしれない。でも、あのキスは、死者への手向けみたいなものだったかもしれないし、親愛の情を示したものだったのかも。
とにかく、ほーじくんがあれ以上傷付いていませんように。俺の所為でつらい思いをさせてしまったから、これ以上は負担になりたくないのだ。
ミューくんとお散歩して、リッターくんと打ち合いをして、サキくんとお勉強して、ジーナちゃんのお菓子を食べて、ユラちゃんの資料集めを手伝って、リオちゃんと走り込みをして……そういう、平穏な日常を、すごしていてほしい。
最後に、騙してごめんね、と、云いたかったのに、云えなかった。
ツァリアスさんが事情を知らなかったのは、みんなが口を噤んでくれていたからかもしれないな、と思う。
一度、死んでしまって時間を巻き戻したツァリアスさんは、俺がどういう情況で居なくなったか、それを知らなかった。
御山が秘匿しているから、かもしれない。けれど七人が、俺が悪しき魂だったことを隠してくれているから、って可能性もある。
自分達が、悪しき魂と親しくしていたと知られたくないから、ではないだろう。あの子達は優しい。優しすぎるくらいだ。だから、俺の名誉を傷付けないようにしてくれたのだ。
それに、四月の雨亭や、秋の娘亭にも迷惑がかかるかもしれない。それで、黙ってくれている。
そう思いたいだけだ。自分は、あの子達にまだ好かれているんだと、思い込みたいだけ。
悪しき魂だから、そんな訳ない。みんな俺を軽蔑しただろう。接触したことを後悔しているだろう。
それがあちらでは普通だ。あの子達が悪いんじゃない。
嫌われても、俺が好きでいればいい。




