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「あの、これ大事にします」
「うん。応援してくれてたんだよね。ありがとう」
女の子ふたりはきゃーっと云い、男の子は何故だか深く頷いた。
三人は俺達に頭を下げたり手を振ったりしながら、お店へ這入っていった。俺は妹に手をさしのべ、サインの時邪魔だからと持ってもらっていた荷物をとる。妹はこういう時に、変な遠慮をせず、兄をたててくれる。
「お兄ちゃん、ああいうの応じるんや」
「おかしい?」
「おかしくないけど、意外」
俺は肩をすくめ、目をわざとらしくぐるっとまわした。妹はくすくす笑う。
「しずく達、オカ研なんよ」
「へえ」
「あ、ほんとにあった。目撃されたの、この辺りだって」
「どこ?」
「毎日特売の……」
「あー、オーダー24か」
「そうそれ」
俺がお世話になっていたドラッグストアだ。毎日のようにもの凄い低価格でいいものを売っていて、その上毎日どれかの商品は特売になる。農家さんと直に契約していて、お野菜やバターも毎日できたてを大量に売っている。生鮮食品は朝仕入れて、次の日の明け方には全部三割から七割引になる。お米の特売をしている時もある。非常にクレイジーな販売担当者が居るのだ。
お薬コーナーも、絆創膏が何種類もあったり、頭痛薬や痛み止めなどが尋常ではなく充実していて、その上基本的に24時間営業という経営者がどうかしているとしか思えないお店である。お客に尽くしすぎだろう。
もうひとつどうかしているのは、建物の脇にへばりつくように、大型のコンポストが設置されているところだ。お店でフルーツなどカットして、どうしても食べられない種やへたはそこへ送られ、肥料になって、契約している農家さんへもらわれていく。レシートを提示すれば、お客の家から出た生ごみもひきとってもらえる。
まじでどうかしているが、循環型経営を掲げ、自然派や意識高い系にうけているのは事実だ。まあね、悪いことではないよな、絶対。コンポスト内では最初に生ごみを乾燥させて砕いてしまうそうで、だから匂いで苦情が来るなんてこともない。法律的にもちゃんとしていて、大丈夫なんだとか。
ケータイを操作する妹に拠ると、俺が早朝や夜にこそこそ特売品を買いあさっていたあのお店の、脇にあるでっかいコンポストの傍に、大きなくものようなUMAが出現し、いつものように生ごみを運んできた店員が驚いて転び、足首を捻挫したそうだ。別の店員が警察に通報したが、近所の交番からおまわりさんが駈けつける前にUMAはとびはねて逃げた。




