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大学はいいのか、と訊きそうになったが、辞めた。妹は自分から喋ること以外を詮索されるのは嫌う。妹のいいところは、話をしている相手が答えに詰まったり、いやそうにしたら、それについて追求しないところだ。自分がされていやなことは、他人にもしない。そういう性格をしている。
妹が立ち停まり、大きな駐車場を備えているアパレルショップを指さした。「寄っていい?」
妹は新しいタイツや、下着類、ワンピースなどをかごにいれ、レジカウンタへ持って行った。「おごろうか?」
「んーん。お兄ちゃん、なんか買わないの?」
頭を振った。下着類は、山程収納してある。こちら製の服は家のクローゼットにあるから必要ない。少なくとも、今は。
カウンタの前には行列ができている。フォーク並びだ。妹がおすすめのジェラートについて喋るので、俺も一緒に並んだ。隣にいるだけだから、邪魔にもならないだろう。「えっとな、チョコもおいしいけど、ピスタチオも好き」
「メロンとかすいかとか、あった?」
「すいかはあったで」
「うまかった?」
妹は満足そうにこっくり頷いた。これは、すいかが狙い目かな。
妹の番が来て、精算はケータイですぐに終わり、俺は荷物をひきとる。持てと云われた訳ではないが、兄貴面したいものなのだ。
お店を出たところで、わっと、華やいだ声がした。妹がそちらを見る。「あ、しずく、なっちゃん」
「友達?」
頷く妹が見ているのは、妹と同年代の女の子ふたりだ。片方がショートボブで、片方がお団子。妹の友達は、家に遊びに来た子は知っているが、それ以外はわからない。このふたりは俺にはわからないふたりだった。
「大学の友達」
「へえ」
ふたりが小走りにやってきた。同じ、黒のワンボックスカーから出てきたようだ。もうひとり、黒いマスクをした男の子が降りてきた。シルバーアクセサリを身につけ、髪はアッシュゴールドで毛先がピンクだ。地毛……ではないよな。あっちでは、ああいう地毛のひとも居た。
妹が手を振る。「しずく、なっちゃん、あーくん。買いもの?」
女の子ふたりが妹にとびついた。妹もまざって三人で笑う。遅れてのんびり歩いてくる男の子が、俺に軽く会釈した。
「うん」
「そっちはデート?」
またしても誤解されたらしい。俺と妹は、苦笑いで一瞬目を交わした。それから、妹が云う。「違うよ、お兄ちゃん」
「えー! こんなかっこいいお兄さんが居るなんて聴いてないよ!」
「云ってないもん」
友達相手だと、妹の方言は完全に消えている。やるじゃん。




