336
そういう、荒れ地のひと、って、荒れ地に帰ったんだろうか?
……セロベルさんの口振りだと、帰ってはいないんだろう。帰っているとしたらそう云う筈。でも、荒れ地の向こうから来るひとでも言葉は解るし苦労はしない、みたいな説明だった。
あれ?
ダストくんやハーバラムさんも、荒れ地の向こうに暮らしているひとが居るらしい、って、云ってなかったっけ?
でも、あくまでも伝承、みたいなニュアンスだったよな。おとぎばなし、みたいな。
「荒れ地料理って、ほんとに荒れ地から伝わったんだ。知らなかった」
「わたしも。荒れ地近くの村の料理だとばっかり」
サッディレくんとアーレンセさんが顔を見合わせて云う。
セロベルさんが苦笑いした。「何百年にひとりの話だから、知らなくても仕方ねえよ。俺も御山で知っただけだ。あそこには記録がある」
……やっぱり御山に行かないと。異世界人の記録が残ってるなら、もしかしたら帰る方法も、捜せばあるかも。……まあ、異世界人だとしたら、なんだけど。
ぼーっとしてしまった。
よく解らないうちに、夕食時になって、食事の用意をしている。大丈夫かとセロベルさんに心配された。
ちらっと食堂を見ても、ほーじくんは居ない。あのふわふわ羽毛触りたいな。落ち着けそう。
メイラさんはご機嫌で、二人前食べてくれた。お餅をつくのはセロベルさんとサッディレくんだ。俺はお芋とプランテーンをふかし続けた。
ミスラ商会の兄妹が、お客さんとして来てくれた。大豆があるんだから枝豆もあるよね、と思ったが、よく考えたら時期外れだ。食べたいなあ。
別の商会と交渉して、乾物を沢山仕入れられそうとのこと。干しなまこや干ししいたけなんかだ。持って来て下さいと頼んでおいた。
トレイを運んでいくと、傭兵ふうのおにいさんたちに、きわどい言葉でからかわれた。
警邏隊なら鎧を着てくる筈だから、傭兵等級が低いのかな。メイラさんとラールさんでしぼっていた。うーん、警邏隊の鎧を着たひと達が大勢居る情況で、あのからかいか。蛮勇。
お弁当は、ローストビーフを発酵させたパンにはさんだものと、マドレーヌ。
人数分つくって、みずやへいれておく。今夜も頑張ろう。
毛織りのローブと、ごわごわしたマントを重ねて、外へ出た。三日月。星は少ない。
シフェ通りは、レントの北東。地図で確認しておいたから迷わない。
廟、というのは、うーん。神社とか、教会みたいなものかな。神さまを祀ってある。井と違って、そもそも人工的なものだ。
感想で指摘戴いた、耳に穴をあけなくてもつけられる耳飾りですが、夢で見た限りでは、こちらの世界には存在していないみたいです。
その部分の説明が抜け落ちていたので、加筆しておきます。完全に忘れていたので助かりました。ありがとうございます。




