表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3406/6873

3266


 異世界に行ってたんだ、なんて、口が裂けても云えないな。余計に心配させる。

 俺はキッチンへ行って、ニュースを見ながら冷凍庫を開けた。保存袋が目について、それをとりだす。安い時に買い込んだブロッコリーをポタージュにして、凍らせておいたものだ。これをあたためればスープは……。

 二年前のものがどうしてこんなに綺麗な状態を保ってる?

 冷蔵庫をあさる。お鍋にいれて火を通せば食べられるようにと自分でつくった、冷凍食品が沢山あった。後は煮るだけの角煮もどきや、自作のミックスベジタブル、旬の時期に買い込んでお砂糖とレモン汁をまぶしたいちご。冷蔵庫にも、バナナのケチャップもどきや、にら醤油、ねぎ塩、レモン塩、塩麹などがある。どれも、俺がつくったものだ。その後妹がつかっているみたいだが、そこまで減っていない。

「ねー、お兄ちゃん、かつ丼ー」

 妹がソファの背に顎をのせ、抗議するみたいに云う。俺はとりだした保存容器をめちゃくちゃに戻し、妹が丁寧にラップにくるんでいる豚のばら肉を全部とりだした。これにバッターとパン粉をつけて揚げればいい。

 手が震えて、豚肉同士がぶつかってかたい音をたてた。

 妹が不審そうな顔をして、こちらへやってくる。「お兄ちゃん? 大丈夫?」

「だいじょうぶ」

 妹は俺の右腕を、両手でつかむ。心配しているのが表情でわかる。リビングとの間にあるカウンタなのかなんなのかわからない部分に、妹が置いたと覚しいとかげやかえるの人形があるのが、とても目についた。

「やろっか?」

「いいよ座ってて」

 思い出して、冷蔵庫の向かいを振り返った。そこには、大家さんからもらったカレンダーをかけてある。俺はそうした。妹がとりはずしていなければある筈だし、妹があれからずっとここに居たのなら大家さんからあたらしいものをもらって、同じようにかけているだろう。妹は不精なところがあるが、そういう点はおろそかにしない。

 壁には、俺が()()()へとばされた年のカレンダーがかかっていた。


 妹が豚肉を揚げている。俺はソファに横になっていた。「低血糖なんて、久し振りだね」

「そうでもないよ」

「色、綺麗になってきたよ」

「とりだしてから、手鍋、持ってきて」

「はい」

 妹の声はかすかに震えていた。カレンダーを見てショックをうけた俺は、うずくまってしまったのだ。妹には低血糖だとごまかし、チョコを口におしこまれた。ずっと、口いっぱいに頬張って思いっきり食べたいと思っていたのに、実際そうなってもあまり嬉しくなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ