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タコスパーティかあ。一般寮、楽しそうだ。
しかしヴェリンさん、食べものを贈るとは、なかなかやるな。
マイファレット嬢が次に発した言葉で、俺はちょっとかたまる。「そうそう、ロヴィオダーリ卿もいらしてますの。おいしいくだものを持ってきてくださったのです」
リッターくんが、社交室から顔を覗かせ、軽くお辞儀した。
どうして朝はやくから一般寮に居るんだろう。リッターくん、わからん。
俺はサレテットちゃん達に指示しながら、主の居なくなったお部屋を綺麗にしていた。九月になれば、このお部屋にも誰かがはいってくるかもしれない。
学生さん達の意向を優先する御山では、お部屋が気にいらなければ、空き部屋がある場合に限ってすぐにかえてもらえる。すぐにつかえる空き部屋がなくても、先生がたも奉公人もなんとかしようとする。ほかの学生さんとお部屋をかえてもらったりね。
一般寮は空き部屋が多いので、このお部屋がつかわれる可能性は低くない。感覚が過敏になる特殊能力や職業だと、どうしてもいやなお部屋というのはあるのだそう。宣言した後に入山する子も居るし、それは仕方のないことだ。
机の天板に傷がついているのが目にはいった。傷……というか、これは焼け焦げだな。熱いものを置いたのか、熱の魔法を練習していて失敗したのか、どちらかだろう。
どちらにせよ、木工作業場に連絡しておかないといけない。心躍らせて入山してきた子が、お部屋に這入ってこれを見たら、がっかりするだろう。がっかりならまだしも、奉公人が自分に対して無礼だとか、奉公人にいやがらせをされたなんて話になったら困る。
「ラウトさん」
廊下に顔を出す。ラウトさんは廊下の天井を、レーイチくん達と協力して拭き掃除している。今日はレーイチくん達も一緒で、さっき合流した。彼らも山道掃除にかりだされることが決定しているので、食事やその他の準備があり、全員お昼に勤務&お仕事が軽めに変更されているのだ。俺の同期達は、ほとんどが一時的に縫製室へ助っ人に行っている。
「なに、マオ」
「このお部屋の机、天板に焼け焦げがあります」
「ああ、それは大事だね。ニシェム達に伝えとくよ」
ラウトさんはちょっと、困った顔をした。「山道掃除があるから、その準備が終わってからになるだろうけれど」
あ、そうか、食事用のテーブルと椅子も用意しなきゃなんだ。
でも、ここのお部屋にあたらしく学生さんがはいるのは、九月になってからだろうし、それまでには間に合うだろう。
その時には俺は居ないかもしれない。
だとしても御山はきちんと運営される。その筈だ。みんな、俺が居なくなったって、大丈夫だ。
きっと。




