31
お菓子がなくなった。
お礼を云い、リーリさんが管理しているかまどを明日見に行くと約束すると、三人は帰っていった。
片付けを手伝った。
せっけんはこの世界にもある。スポンジはなくて、ごわごわした布でお皿を洗った。「あ」
「……なあに?」
……うーん。すすめられていないということは、ないんだろうが。
「おふろってありますか?」
一応訊いてみる。ドールさんは小さく頭を振った。
「この辺では、川で体を洗うわ」
「あ……そうですか……」
「庭の隅に、池があるから、うちではそこをつかうの。マオ、水浴びしたい?」
頷く。……ただし着替えはない。
ドールさんはその辺のことも考えてくれていたらしい。片付けが終わると、下着をふた揃いと、この辺のひとっぽい服、それにせっけんとタオルを渡してくれた。
「服は、ダストのお古で悪いけれど……」
「じゅうぶんです。ありがとうございます」
「明るいうちに済ませたほうがいいわ」
はいと頷いて、いったんはなれへ戻った。用足しを済ませ、濡らしたら悪いかなと思って腕環や髪飾りを取る。棚の上へ置いた。
着替えと、石鹸、タオルを持って、ドールさんに教わった場所へ行く。
池は、はなれの真後ろ、少し行ったところにあった。小川から水を引いてあって、周りは木々に囲まれ、その木々が目隠しになっている。
脱いだ服はその辺の木にひっかけた。水にはいる。そこまで冷たくはないが、はやめに切り上げたほうがいいだろうな。
下着類や、汚れが目立つものをてばやく洗い、しぼって木へひっかける。そのあと体をよく洗った。あったかいお風呂にはいりたいなあ。
ざばっと、頭まで水へはいった。戻る方法を考えなくちゃ。神話にあった「よそ」が異世界だと考えるなら、こちらへ来れたんだから、戻る方法だってあるのじゃなかろうか。御山にいるという、偉い学者さん達なら、なにか知っているかも……?
頭を出した。視線を感じて左へ目を遣る。
木々の隙間から、十歳前後の男の子達が、こちらを覗いていた。
きゃーっと叫んでいなくなる。おう。こっちのせりふだわ。
まさか異世界くんだりまで来て覗きをされるとは思わなかった。しかも男の子に。
「……さむ」
水から上がる。ぶるぶるっと頭を振って水けを飛ばし、乾いたタオルで体を粗方拭いた。下着、ずぼん、チュニック、と身に着ける。
足裏を洗って拭き、靴を履く。それは片足づつ。
袖まくりしてタオルを洗い、木にひっかける。上着とベルトを着け、マントを羽織り、生乾きの洗濯物を回収して、はなれへ向かう。どっか干す場所あるかな、洗濯紐かりなきゃ、と考えているうちに辿り着いた。
「……あ」
ピアスも髪飾りもつけていない、髪の短い人物が、池から顔を出していたのだ。男の子達は、結婚適齢期のお姉さんだと思ったのだろう。
なんだかばつが悪かった。




