表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
買いものに行ったら帰り道が異世界につながっていた
31/6709

30

 

 お皿が空になると、リーリさんが持ってきたお菓子がふるまわれる。

 粗く刻んだナッツ類とドライフルーツのいっぱいはいった、クッキーとケーキの中間みたいな食感の生地を、蜂蜜に浸したものだ。めったやたら甘いがおいしい。おいしいですと云うとリーリさんは嬉しそうに頷いた。

 バドさんがにっこりした。

「得した。お客人がないと食べられないもんねえ」

「蜂蜜あったの、リーリ」

「なきゃつくれないでしょ」

 リーリさんはくいと、顔を後ろへ向けた。この村のひとには解るらしい。バドさんルルさんが頷いたから。「あー、隠してたんだ」

「ちょ、ぞ、う、してたの。いつお客人があるか解らないんだから。マオ、ほんとならこれは来た日に食べてもらうものなの。遅れてごめんね」

「いえ。今日食べてもおいしいですから」

 四人とも声をたてて笑った。ナジさんの奥さん=ドールさんでさえ。なにか面白かったかなあ。

 半分くらい食べたところで、会話がやっと脳に到達した。「蜂蜜って、めずらしいんですか?」

「ん。最近は、シアイルから取り寄せたものばかりだからねえ」

「荒れ地がひろがってきてるから、養蜂はすたれちゃった」

 ルルさんが溜め息を吐く。

「このところ、夏が短くって冬は長いし、まあるいお月さまも滅多に出てくれやしない。なんかの前触れかね?」

「バドは解るんじゃない? 「占い師」だもん」

「わかんないよ」バドさんが頬張っていたお菓子をのみこむ。「御山(おんやま)の偉い学者さん達が研究してるでしょ」

「還元が足りないの」

 ぼそっとドールさんが云い、注目されて肩をすくめる。「ほら、昔、ハーイラおばあさまが云ってたでしょ? 還元をしなくなったら、この世はおしまいだって」

「そうだとしたらこの村は間もなくおしまいだね。残ってる還元士はズィズのじいさんとルッディだけ、バドんとこの子は御山(おんやま)へ行ったっきりだもん」

「おしまいって、具体的にはどういうことなのかしらね?」

「魔王が来るんでしょ」

 ルルさんがおどけた。それは単なる軽口らしく、四人はくすくすと笑いあう。

 こっちは背中にいやな汗をかいていた。すみませんここに居ます! 変なことの元凶だったらすみません!

 リーリさんが気遣ってくれた。「マオ、もう少し食べる? 男連中には別にあげなくってもいいものだから」

「あ……えっと……」

「いっぱい食べて大きくなんなきゃね」

「ヤームみたいに?」

 笑いが弾ける。

 結局、おかわりはもらった。おいしかったから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ