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303

 

 外に出ると、空気が冷たい。もうよなかだ。

 ローブ一枚では辛いので、久し振りにマントをとりだして羽織った。うー、ぬくぬく。

 フードを被り、ゆっくりしっかり歩く。通りに近いから街灯の光が届いてはいるが、それでもくらい。ランタン、今度、買わなきゃ。

 門をくぐる。ここにはよっぽどのお大尽が住んでいたのか、門はふたつだ。わー、綺麗な半月。

 次の門が見えてきた。これって、魔物が来た時に閉めたりするのかな?

 ぼーっと考えていると、横合いからなにかがぶつかってきた。


 痛い。

 きつく抱きしめられて、口を塞がれていた。抵抗しようとしたが、まったく動けない。力強すぎ……。

 やばいかな?やばいよね? 変質者かな? それとも袖にされたひとが待ち構えてたのかな?

 偸利をつかおうとした瞬間、手が弛んだ。「すまん」

 浮いていた足が地面につく。は?

 雲が動く。半月が再び顔を出し、俺を捕獲していた人物は軽く頭を下げた。

「間違えた」

「……は?」

「間違えた」

 なにこのひと壊れたテープレコーダーかなんか?

 仰ぐ。180cmくらいかな。がっちりしてる。大振りの剣を佩いていた。こわいわ。かちっとした外套、ふかふかのファーのローブ。全体的にくらい色合いなので、闇に紛れられたら解らん。

 で、見覚えがあった。

 顔は兎も角として、黒白の斑髪なんて、こっちの世界ではひとりしか見たことがない。市場で、わがままお嬢さまに怒鳴りつけられていた少年だ。


 リッターくんだっけ。

 俺は口を開くが、言葉が出てこずに二・三回ぱくぱくさせた。それから云う。「ま。間違えたってなにと」

「すまん」

 リッターくんは俺を片腕で制圧した。嘘だろ? 近くで見たら中学生くらいだったのに。

 繁みにひきずりこまれる。リッターくんは俺を後ろから抱えるみたいにして屈み、俺の口を塞いだ。

 抵抗しようとするとささやかれる。「静かに。すぐに放す」

 かちんときたものの、どうしようもない。お前体力高いんだろ! くやしい。

 門から誰か出てきた。三人組で、楽しそうにお喋りしている。「可愛かったなあ、マオちゃん」

「くそ、俺も勝負してもらうんだった。今日はついてたんだ」

「お前が勝ってるところなんて見たことないぞ。酔って幻が見えたか?」

 ぎゃははと笑い声をたて、三人組はもうひとつの門をくぐっていった。

 腕の力が弛む。「帰れ」

「は? なに……」

 二の句が継げないとはこのこと。

 体を離し、振り返る。乏しいあかりに、リッターくんの目がきらっきらっと光った。

「間違えたことは謝る。だから帰れ」


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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