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違った。
余ったポイントをアイテムに変換します
まだ余ってたのか。残りポイントが表示されないから解らなかった。
入手:「傷薬・魔力薬詰め合わせ」「貝貨袋(小)」「銀貨袋(小)」「鹿皮の鞄」「詰め合わせ(並)」
貝貨というのはお金だろう。なにもないと困るものなあ。薬系も助かる。
スタート地点:ランダム
はっ? もう開始?
種族とか信仰とか選んでないけどいいの?
それに、ランダムって、それくらい選ばせてくれてもいいじゃないか。夢なんだしさあ……。
お疲れさまでした
まもなく開始します
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なんか痛い。
肌がひりひりする。口のなかになにかはいっていて、咽が痛い。「うえ」
跳ね起きた。砂だ。砂に半分埋まっていた。公園の砂場、無くなった筈なのに。
ぺっぺっと砂を吐き出した。風が吹いて砂が巻き上がる。目を瞑って腕で頭を庇った。足が砂に埋まってゆく。なに、これ?
「さばく?」
……ドラッグストア帰りに沙漠に辿り着いた?
いや、あれは夢で、だからこれも夢で、まだ目が覚めていないんだな、そっか。
四辺を見る。岩山と砂。沙漠だ。リアルだな。
えっと……服装は、夢でドラッグストアに行った時と同じ。シャツにずぼんにパーカ、靴。……皮製品っぽいポーチ? がベルトに通っていた。これは覚えがない。
風が吹いた。フードを被るといくらかましだ。被っておこう。
と。
足元にあるものに気が付いた。
リュック。エコバッグ。
十秒くらい停止していた。それから屈み込み、なかを改める。お米の袋が目にはいった時に心臓がどきどきしはじめた。砂糖の袋に、塩の袋に、チョコレート、グリセリン……ドラッグストアで買ったものだ。
まあ。夢だし。夢。
「えっと……メニュー?」
ぱっと、目の前にウィンドウがあらわれた。夢じゃん。ゲームみたい。
名前:國立・真緒/クニタチ・マオ
体力:可 魔力:優
職業:魔王
Lv:1
特殊能力:収納空間 Lv.MAX
言語:異世界 Lv.MAX
悪しき魂
魔物退治(職業)
使役(職業)
状態異常無効(職業)
ああ、さっきのキャラメイク通りだなあ。
収納空間を開いてみた。開こうと思ったら開けたのだ。なんか……裂け目? みたいのが、ある。眼鏡のレンズが割れたみたいに、景色がちょっとずれてる。触ってみると指が消えた。手を引っ込める。見えなくなっていただけか。
……リュックとエコバッグを投げ入れてみた。はいる。取り出せる。またはいる。ワア凄い。
じゃない。なんだこの夢は? 意味が解らない。なんかリアルだし、目に砂がはいって痛いし、咽が乾いたし、はやく目覚めたい。
パーカのポケットからケータイを取り出した。圏外。夢のなかで?
なんとなくいやな感じがして、電源を切ってポケットへ戻す。
ポーチのなかを見てみる。がらす壜が数本。中身はきらきらしている。A6くらいのサイズのしっかりした布袋は、なかに綺麗な貝殻と、形の不揃いな銀貨がはいっている。あとは、なんかよく解らない石と、なにかの繊維みたいなもの、小枝の束。塩の塊(といってもピンポン玉程もない)のはいった皮の小袋。
がらす壜は、薬の詰め合わせ。
財布は、貝貨と銀貨。
後のは「詰め合わせ(並)」か。
……動いてみよう。とにかく歩く。そうしたら、こんな、……。
へらへら笑いながら歩き出した。夢なんだ、覚めるんだ。そう思いながら。
躓いた。転ぶ。「痛い」ころんと転がってから立ち上がった。何に躓いた?
確認して後悔する。でっかい……みみず? いや、むかで? みたいなのだった。虫は平気だけどこの大きさは駄目だって。
そいつが鎌首をもたげた。ああ、フトマルヤスデか。図鑑で見たことあるわ。でも、こんな大きめの抱き枕みたいなサイズではなかったなあ。
踝を返して走り出す。無理無理無理無理なにあれ。新種? 違う違うここは夢、夢、夢、夢、夢だからはやく起きろ! やすでにくわれる夢なんて見たくねええ!
やすでが追いかけてきた。音がしている。やめてまじで。おいしくないから。全然おいしくないから!
「あ」
転んだ。普通に、砂にあしをとられて転んだ。終わった。
やすでが迫ってくる。お口が可愛い。虫はどちらかというと好きだがこれは。
「にゃああああ!?」
恐怖に駆られて四肢をばたつかせた。昔百足にかまれた時もこれやったな。進歩がない。
右手と左足がヒットした。「!」やすでがぴょいっと飛び跳ねる。体液が散った。え?
ずざざざざ、と、砂に潜っていった。後に残ったのは、黒茶色の体液が少し。
……。
「……にゃーってなんだよ……」
なんかはずかしい。