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御山に関しては……。
御山は、この世界の人間にとって、特別な場所らしい。
今でも三国は御山を欲しがっている。
事を構えはしないが、シアイルは多額の寄付をしているし(御山での学費はただだ)、ロアも御山にはいれそうな子どもたちを集めて国立の学校へいれ、養成している。ディファーズは一年目のカリキュラム終了後の「適職診断」に神降ろしを派遣して、他の二国へ仲好しアピールをしているとか。
じゃあ何故そうまでして御山を欲しがるのかと云えば、宗教的な問題のよう。
この世界の神話をざっと読んでみたら、御山が出てきたのだ。人間に最初に与えられた土地として。
この世界は、「よそ」から来た神さまが開拓したらしい。
その神さま(名前はない。表記は「主」や「天」、「開拓者」なんかだ)は、この世界を完成させた後、「よそ」から人間を連れてきた。人間がもと居た場所は「駄目になってしまった」ので、移住した訳だ。
その時に、神さまがまず御山へ人間を降ろし、ここを棲み処とするようにと命じた。その時は西は海、北は沙漠、南は凍土で、住める環境ではなかった。
環境が厳しかったので、神さまは人間に魔法の力を授け、更に「よそ」から神さまをリクルートしてくる。この部分の「よそ」は、人間がもともと住んでいた「よそ」ではない。その神さまたちの助けもあり、文明は発展していった。
はじめは神さまに従っていた人間たちだったが、見れば、東には豊かな土地がある。降りてみようと御山を降りた。そこが今の裾野だ。
暫くして、階級というものがはっきりしはじめた。御山の上に住んでいるのが偉いひと達、御山でも下のほうや、裾野に住んでいるのは、そうでないひと達。
自然と、移住当初からリーダーシップをとってきたひとや、その家族、仲間が神さまとの橋渡しをするようになる。このひと達がかつての王国の王族や貴族だ。
ただ、その手順は神さま達にとってまだるっこしかったらしく、半数が世界に散った。残りの半数も、次第に人間の相手をするのに疲れ、居なくなった。開拓者の神さまもどこかへ消えた。
神さま達が世界中に散ったからか、西に土地ができ、北は潤い、南はあたたかくなった。人間達はいくつかのグループに分かれ、御山を離れて各地へ移り住んでいった。
王国が還元士を囲い込んだり、魔力なしを差別したり、南の土地を「もらって当然」な態度だったのは、天に賜った御山を自分たちが押さえている=自分たちがこの世界の支配者というおごりもあってだったのだ。別に、神さまは、御山を持っていたら支配していいよなんて云ってないのに。
でも、それはこの世界のひと達には当たり前の認識なのかな?
三国とも御山を欲しがっているのだし。
今、御山に居るのは、学者や研究者、才ある若者、あとそのひと達の世話をする下働きくらい。学者や研究者は学問さえできればいいので、覇権に興味はない。
ただし、やられたらやり返す精神は健在なので、どこも手を出せない、……と云うことのよう。
「よそ」……って、多分異世界だよな?
神さまは、異世界から来てここを住める状態にし、自分の世界の人間を住まわせた。で、更に別の世界から神さま達を連れてきた。
「異世界からひとを召喚できる? ってこと?」




