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「いらっしゃいませ」
お客さんなのできちんと対応せねば。ううー、ふわふわ羽毛。触りたいー。サーダくんはまっすぐつやつや髪なのに、ほーじくんはほんとに鳥みたい。
サーダくんがテーブルをさがすのを尻目に、ほーじくんはミューくん達の隣のテーブルへさっさと座った。
「フォージ……ああ、癒し手の子じゃないか」
「マオ、会いたかった」
サーダさんをまるきり無視で、ほーじくんは俺の手を両手で掴んだ。じっと見詰めてくる。鳥さんの目してる!
はっ、見蕩れてしまっていた。違う違う。顔を背ける。「お菓子とお茶で、銀貨1枚です」
「ふたり分お願いします。フォージ」
サーダくんがほーじくんの腕を軽くはたく。ほーじくんは残念そうに手をひっこめた。二人前ですねーと俺は横歩きで厨房へ逃げる。
お茶を淹れているセロベルさんが、呆れ顔になっていた。「ほんとに来たな、祇畏士みならい」
「ですね」
「お前、変わったシュミしてるな」
してないですう! 鳥さんは可愛いですかわってないです鳥さんが可愛いのは真理ですー!
かわってはいない。鳥さん可愛いもん。
お茶のセットを運ぶ。ほーじくんは何故だか隣のテーブルを見詰め、ミューくんはかたまっていた。
トレイを置く。「どうぞ。お茶のおかわりは自由です。申しつけください」
「ありがとうございます。ほら、おいしそうだぞ、フォージ」
「……ん」
ほーじくんはマグをとり、お茶をすする。ただし、目はミューくんから外していない。
ミューくんは首をすくめていた。サーダさんはクッキーをかじる。「おお、旨い。フォージ、食べないのか?」
「……食べる」
「お前、甘いものは得手ではないだろう。無理はしないように……ミューと云ったかな?」
サーダくんがちょっと身を乗り出し、ほーじくんごしにミューくんを見た。「入山が決まったと聴いたよ。おめでとう」
「あ……はい……」
「フォージと同じくらいだから、行で一緒になるだろう。弟を宜しく」
あ、ほーじくんの羽見ちゃってた。しゃんとしなきゃ。
そうだ、折角だし。「ミューくん、お祝い」
「え?」
ミューくんのお皿にクッキーを追加した。「おめでとう」
「あ。はい……」
「一次だけで通ったと聴いたよ」サーダくんはミューくんへ笑顔で云ってから、弟へは冷ややかな目を向ける。「フォージ、みならいなさい」
「一次だけで通ったの? ミューくんすごーいねえ」
ミューくんははははと笑った。なんだか顔色が悪いけれど、どうしたのかな?




