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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
祇畏士(みならい)さま、魔王を追ってくる
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 借金苦で主人公の親が一家心中を目論むが、主人公だけが生き延びる……という導入部分の映画に出たことがある。せりふなし、公園で友達とサッカーをしているシーンの次には車の後部座席で死んでいる、主人公の弟役だ。しかも遊具やドアに阻まれて見切れている。

 見学に来ていた原作者さんが、サインいりの原作本を出演者へプレゼントしてくれた。

 原作は、借金で首がまわらなくなったひと達へ取材したルポなのだが、一章でお金を借りることのおそろしさを説いている。

 そのなかに、借金を一本化する、という件があった。慥か、そのころ読んでいた推理小説だかにそういう件が出てきて、一本化すると大変なことになるのだが、理屈が解っていなかった。ルポを読んだら氷解したのではっきり覚えている。


 例えば、AさんがB・C・Dというみっつの会社からそれぞれ100万円借りる。すべて単利で、月利は10%とする。

 ひとつき放っておけば、借金は合計330万円。単利なので、ふたつきたてば360万円になる。

 Aさんは借金を放っておいて、その調子で利息がかさみ、十ヶ月で600万円になった。そこに、借金を一本化したほうが返すのが楽だよ、うちでまとめてあげるよ、と、E社が話を持ってくる。

 Aさんは600万円を「今までと同じ条件で」E社で借り、B・C・D社に返済した。

 するとどうなるかと云うと、次の月にはAさんの借金は660万円になる。元本が600万円になったから、その10%は60万円だ。十ヶ月経てば1200万円になる。

 100万円借りて、一年たったから115万円返そう、というのは解る。傘借りたから洗って返そうとか新しいものを買って返そうとか、そのくらいの感覚だと思う。健全な取引だ。

 でも、酷い場合は、こっちで借りてあっちへ返し、あっちで借りてこっちへ返し、とやるから、単利も複利もない。どんどん元本を増やしているのだ。あくどい業者にそそのかされてやるひとも居る。

 最初は10万円借りたのが、気付いたら何千万にも膨れ上がる。それも、ものすごいスピードで。傘を借りたから傘工場を返すみたいなもんである。流石に無理だ。


 ご褒美のケーキをこってり系のチョコケーキじゃなくさっぱり系のメロンタルトにかえたくらいこわかったので、よく覚えている。借金はこわいのだ。

 で……四月の雨亭の場合借り入れ理由が治療費だし、そもそも元本が多かったのだろうと思っていたが、セロベルさんの困惑顔を見ると違うのかもしれない。

 深呼吸する。「ルッタさん。この業者は公正とは云えません。あなたには一切の説明なしで書類を書き換えているんですよね?」

「え? あの。書類は、返す度に新しいのをくれて。でもあの。わたし計算苦手で、い、意味がよく解らないの、だけれど?」

 ルッタさんの声は震え、ところどころひっくり返る。俺が詳しく説明すると、ルッタさんはみるみるあおざめていった。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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