26
夢は見なかった。
目が覚めたらクッションにかじりついていた。慌てて口から出す。だ、大丈夫、被害は大きくない。
状態を起こし、ぼーっと室内を見る。「……戻れてない」
お花のういた水鉢が飾ってある棚と、閉じた窓、かんぬきのかかった扉。すべて昨夜の通り。世は並べて事もなし。
なくねえ。異世界人が生命の危機にさらされています。
かんぬきを外して戸をうすく開け、外の様子をうかがう。あけがただ。まだ陽は登り切っておらず、ほのぐらい。
……とりあえずトイレ行こう。
外へ出た。トイレは遠くなくて、すぐに辿り着く。用を足した後小川で手を洗っていると、ふいと、魔法つかえるのかな、と思う。
……小石がある。
ちょっと悩んでから拾った。
「崩潰?」
小石が砕けた。
さらさらさらさら……と、砂粒になって手から滑り落ちてゆく。
上質な小麦粉みたいに、細かくって均一だ。砂絵につかえそう。
「……あっ、あさごはんはなにかなっ?」
なかったことにした。知らない知らない。小石? なんの話ですかね?
綺麗かどうかわからんが、少し上流へ行って水をすくい、口をゆすいだ。あ、この水おいしい。
咽が渇いていたが、おなかをこわしたくないのでやめておく。手についた砂は洗い流した。はい、もうしらないー。小石なんて最初っからなかったってことで。
変な汗をかいていた。心臓がどきどきしている。え? え? 魔法ってあんな威力あるの? こわくない? つかいみちもねえわ。破壊にしか用いないでしょうよあんな魔法。
さーっと離れへ戻った。ベッドへ転がって心臓が落ち着くまで待っていると、ナジさんが来た。
体を起こす。「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかい?」
はいと答える。嘘ではない。信じられないことに、命の危険にさらされていても人間は熟睡できる。
ナジさんは、もう少ししたら朝ご飯だと云った。それと、各地への問い合わせの結果は、暫く待たないと解らないとも。
「不安だろうが、私たちのことは家族と思って、ゆっくり待っていなさい」
引き攣った笑顔で頷いた。
逃げるのは今じゃなくてもいい。多分。今逃げても右も左も解らなくって、きっと死ぬ。
「それと、わたし達はまた収穫に出る。暫く家をあけるが、家内にいってあるから、マオは心配しなくていい。ただし、なるたけ外には出ないでおくれ」
「はい……」
「シアナンは連絡を受け取るために残るし、大丈夫だから」
じゃあご飯だとナジさんはにこにこ顔で出て行こうとする。と、立ち止まって振り向いた。「そうだ、ひまだろう。本が幾らかあるから、自由によんでいい。ここへ運んでおくからね」
一時間後。食事をとって、みんなは荒れ地へ、収穫のため出発した。
はなれへは、ダストくんが本を運んでくれている。情報収集の時間だ。




