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 最初に気付いたのはセロベルさんだった。

 突然立ち上がって俺の襟首を引っ掴む。「え?」俺はそのままぶん投げられた。

 なんとか受け身をとる。いたい!

 両手を草地について体を起こす。さっきまで俺がいたところに、大きな……うん……そうだとは思いたくないんだけれど……猫が居た。


 嘘だろ? あのサイズ?


 まったくもって、ダストくんの云っていた通り。猫はこわい。

 顔だけで、直径1m近いぞ。ふさふさした茶色の毛並みで、猫というかライオン? トラ?

 でも猫。猫だ、顔が。目がサードオニックスみたい。


 体がすくんだ。

 セロベルさんとメイラさんは剣を抜いている。「冗談だろ、まだ見付かって半日もたっちゃいないのに!」

 メイラさんがそう云いながら、切りかかった。

 猫は前脚を横に薙いでそれを弾く。やばくね?

 だが、その動きは想定内だったらしく、前脚につられてちょっと傾いた頭の後ろのほうをセロベルさんが剣で殴る。

 殴る、だった。切れていないみたいだったから。血が出ない。

「マオくん」ライティエさんだ。腕をひっぱられ、立たされた。「あっち、バルドの後に居て」

 俺は戦えない。頷いて、バルドさんのほうへ走った。

 のだが。

「マオ伏せろっ!」

 メイラさんが叫んだ。俺はその場へ伏せる。伏せたというか、違うな、転んだ。正確には。

 なんか来たから。

 音、凄く大きい音がする。

「組んでるぞ。らあああある!! あしどめしろおおお!」

 セロベルさんが怒鳴る。俺は地面に俯せて、両腕で後頭部を庇っていた。はばたきの音、ぶつかる音と衝撃、ばらばらとなにかが散らばって体にかかる。

 あちこちで魔法が弾け、剣と魔物のなにかかたい部分(爪? 牙?)がぶつかって硬質な音を立て、地面が揺れる。

 ひょいと抱え上げられた。「ヨー、はやく!」

「解ってます!」

 ぎゅっと瞑っていた目を開ける。ヨーくんだ。「マオさん、大丈夫ですからね」

 ヨーくんは俺をバルドさんの後ろへ投げ落とす。踵を返して剣を振り被る。俺はバルドさんの後ろで、目を瞑って縮こまる。

「マオ、安心していい、セロベルとメイラが居ればこれくらい」

 バルドさんが変なところで言葉を切った。

 目を開ける。おそるおそる、見る。

 バルドさんが倒れていた。その体の上に、猫が居る。バルドさんの首の辺りにじゃれつくみたいに。

 血。

 血をなめ。


 バルドさんが死ぬかもしれないと思った。必死だ。

 必死に、収納空間からとりだした最も重いもの、分厚い鉄製の大鍋で、猫の脳天をぶっ叩いた。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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