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魔力という言葉が解り辛くしているんだな。
魔法をつかえる力を魔力、その為に必要なコストをMPとしてみる。
魔力は、そうだな、家電。で、MP=「素」は電力。
神さまは発電所で、還元士が変電所だ。
自分が持っている家電(魔力)をつかって結果を出す(魔法を発動する)ために電力(「素」)が必要。
発電所でつくった電気(神さまがつくったこの世界)を変電所(還元士)でつかえるようにしてもらう。
めんどくさいな。そういうものとのみこもう。
魔法をつかうことでバランスがおかしくならないように還元士が居るのかもしれない。しらんけど。
話し込んでいるうちにすっかり陽が落ちていた。ほしがきらきらしはじめている。戻ろうとダストくんが云い、そうした。
「魔法って疲れるの?」
「ものによるなあ。無理してつかったら死ぬ」
屋内へ戻ると、晩御飯の準備中だった。男の子達が野菜を切ったり肉の下準備をしたりしている。ダストくんも参加した。「てつだうよ」
「マオは客人だから座ってて」
手伝わせてはもらえないらしい。大人しく、クッションへ埋もれるみたいにして座る。魔法かあ。
めにゅーをひらく、と考えたらそのようになった。スクロールすると、持ちもの一覧と魔法一覧がある。魔法一覧へ進んだ。
出ました、禍々しい魔法オンパレード。任意の範囲を毒の空間に変化させるとか、よそから魔力や生命力を奪うとか。使役もある。ただ、後ろに使役中生物0とついているから、使役している生きものはない。
消費MPは書いていなかった。こういうとこ不親切だな。……でも、効果が凄そうなのが消費も多い、と考えて間違いなかろう。あと、上のほうにあるやつは消費も軽そう。ものを壊す、とかの単純なのだから。
消費が多いのをつかったらやばそうだな。「偸香」というのは絶対つかわない。
ところでもとの世界へ戻るにはどうしたらいいんだろうか?
もの凄くゆっくりだったが、事態のそもそもの原因に気付いた。
異世界に来たことだ。
もとの世界へ戻れば、滅却されるかも! なんぞと怯えなくっていい。少なくとも知る限りでは、そんなことできるひとは居なかった。……知らないだけというのはやめてほしいな。
と。とにかく、もとの世界へ戻れば助かる。筈。でもどうやって戻る?
ダストくん達が騒いでいる。「ばっか、セム、それ塩じゃねえ! 母さんの薬の材料!」
「え、嘘」
「おい、サイレ、ここんとこ取り除け」
「りょーかいー」
いい匂いがしてきた。野菜炒めと、お肉の塊を焼いたのと、炊き干しのご飯かな? ダストくんにぽかりとやられたセムくんが、への字口で、果物の籠を運んでくる。紫と淡い緑の斑のぶどう、オレンジというより赤いマンゴー、小振りなアボカドが山盛りだ。小さい包丁が添えられているから、各自食べたいものを切って喰えということだろう。「マオ、お茶? お水?」
「あ、お水で」
「わかった。ダストお、お前本気で殴ったろー」
「お前も「戦士」だから平気だろ」
「お前の体力優だろうが! こっちはそんなに高くないの」
長老三人、ヤームさん、もうひとりおじさんがはいってくる。ダストくんに小突かれ、セムくんがぶんむくれている。「ナジ長老、ダストから殴られました」
「あ、お前」
「ダスト」
「だってこいつ、塩と母さんの薬の材料を間違えたんですよ」
わいわいと食事作りが進行し、お皿が運ばれてきた。ナジさんの奥さんははずかしいから同席しないとのこと。男の子達で食事をつくるのは習慣らしい。沙漠へでるのに、料理のひとつもできないでは困るから。
お祈りをして、食事開始だ。安心なことに辛すぎなかった。おいしい。お塩はちょっと多いかな?
「マオ、おかわりあるからな」
「ありがと」
「マオ、ぶどうも食べなよ」
「うん」
ご飯が済むと、客人用と云うはなれへ案内される。ベッドの準備は整っていた。ナジさんの奥さんがしてくれたらしい。ナジさんは換気の為にだろう開いていた窓を閉め、寝る前にしっかりかんぬきをかけるよう念を押した。ナジさんがおやすみと云っていなくなる。ベッドへ腰掛けた。
もとの世界へ戻る方法、おもいつかねえ 。




