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かつて、御山を中心とした大きな国があり、隆盛を誇っていた。今の御山、裾野、ディファーズとシアイルのほとんど、ロアの半分くらいが領土だったそう。
その当時は、ディファーズは神聖領と云って宗教者が多く住み、シアイルは王族の避暑地で貴族の憬れの地、ロアは主に農業用の土地で、南の国との戦いに備えて前哨部隊が多く配されていた。裾野は、交易の中心地。
千年と少し前に、農業従事者と軍隊による叛乱が起こった。蜂起したひと達は、それまで敵対していた南の国々と手を結んで、「ロア連邦共和国」を建国。
北へ逃げた王族と貴族は、当時の皇帝の名前をとって、「シアイル帝国」をつくった。ロアの「叛乱軍」のなかには一部貴族も含まれていたので、新たに国をつくってしまって、てっとりばやく叙任しなおしたかった、と伝わっている。
宗教者や、特に天の庇護強き職業(祇畏士とか神降ろしとかだろう)は西の神聖領へ逃げて、宗教者のトップである「神聖公」を国家元首に据え、「ディファーズ神聖公国」をつくった。そのうえで、神さまのしもべなのでどっちにも味方しませんよ、と宣言したらしい。ただし、漁夫の利的に土地を掠めとってはいた。神の名のもとに。
裾野は完全に中立。戦わなかったし、どこからも戦いをしかけられなかった。叛乱直後から御山の庇護にはいったからだ。
御山には、官僚や学者達が残っていた。とんでもない天才達だ。シアイルは爵位を、ディファーズは神の恵みを、ロアは豊かな暮らしを餌に彼ら彼女らを味方につけようとしたが、どこも失敗した。どころか、くだらない争いに巻き込もうとするならこちらにも考えがあると、それぞれ攻撃をうけた。
結果は御山の圧勝。三国はだから、御山やその庇護下にある者には今でも手を出さない。
また、御山では、才ある若者ならどこの出身でも受け入れ、学ばせてくれる。ダストくんは体力も魔力も一定水準をクリアしたので入山をゆるされた。なかには、めずらしい能力や、めずらしい職業への適性が高いから入山できるひともいる。
三国同士での小競り合いは散発的に起こってはいたが、この二百年くらいは落ち着いている。お金は昔のままだ。そのほうが面倒が少ないから。どうも、昔から銀貨の加工をするのは国ではないので、形が不揃いらしい。
一枚取り出してみてみると、丸があったり四角があったりする。重さは大体4g前後だそうだ。銀が手にはいったら、大雑把に4gくらいに分けて、貨幣としてつかっているということのよう。
貝貨一枚=銀貨二百二十八枚。
銀貨一枚=エスター百五十二個。
「えすたー?」
「この木の実。めずらしいから金のかわりになる。南でしか取れないんだってさ」
ダストくんは収納空間にいれていたらしいお財布を取り出し、エスターを見せてくれた。表面が蝋っぽい、ジュズダマみたいなものだった。南、はロアとそれより南を意味しているらしかった。
三国の名前を考えるの面倒だったのですが、流石に書かないと文章がまわりくどくなるので命名。
考えなくていい「過去の大国」は楽。




