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なんかまずかった?
小首を傾げた。「足りませんか? ……あっ、もしかしておかねじゃないとか」
「いや、」ナジさんが手を前へ出す。「マオ、心配しなくていい、これはお金だよ。ただ、何日か泊めるのにこんなにはもらえない」
???
あ、貝貨って、価値が高いのか。貝なのに。
百円玉くらいの、凄く小振りなヒオウギガイみたいな貝がらである。たしかに綺麗だが、採りに行けばあるのでは。
仕舞いなさい、といわれた。「でも……」
「解った、じゃあ、銀貨をもらおう。一枚で充分だ」
にっこり笑って銀貨を渡し、絨毯の上のものは仕舞った。
ナジさんは咳払いする。「マオ。お金はどこで?」
「え? ……もらいました?」
ポイントが余ってたからもらえた、という理解でいいだろう。だからそう云った。
長老達は、険しい顔で目を交わした。それから、手続きがあるから、と三人揃って出ていく。なんか駄目だったのかなあ。
「マオ、晩飯がはいらなくなるぞ」
はっ、手と口が勝手に動いている! クッキー食べれば食べる程おいしい。甘すぎなくて、噛みしめたくなる食感。
ごくんと嚥みこむ。「ダストくんのお母さん、お菓子つくるのうまいね」
「それはヤームさんの奥さんがつくったんだよ」
ダストくんはくすくす笑う。「ヤームさん家の前にオーブンがあるから。奥さんが管理してる」
「へえー」
昔のヨーロッパみたいな感じなのかな?
本で読んだことある。オーブンは各家庭にある訳じゃなくて、町で管理してた……みたいな。
「最近はロアから沢山小麦がはいってくるから、よくつくってるみたい。ヤームさんの奥さんは、でも、めずらしい職業なんだ。「護衛士」。ただ能力との兼ね合いが悪いみたいで、収穫に出たりはしない」
「ふうん……」
護衛士かあ。さっき、護衛魔導士っていってたっけ。あれに近いものかな。
「あ、ねえ、おかね、ほんとにあれでだいじょうぶ?」
「ん?」
「ほら。ここで、つかえないとか?」
どこか別の国のお金だったのかもしれない。だから表情が険しくなったのでは、と思ったのだが、ダストくんは頭を振る。
「もともと同じ国だったんだからお金は一緒だよ」
「え」お茶が気管にはいるところだった。「いっしょ? なにが」
「国が。昔は同じ国だったんだ、御山も、裾野も、ディファーズ、シアイル、ロアもな」
ダストくんがお茶のお代わりを注いでくれた。ありがとうと云う。
ダストくんがかいつまんで説明してくれる。




