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たまったものじゃないな。あのひと、大丈夫なのだろうか?
銀行っぽいところはないみたいだし、保険もない。どうするんだろ。
大通りを南下した。銀行と云えば、貝貨が溜まっているし、銀貨に崩したい。ナジさんが、貝貨を崩したい時は両替商へ行くこと、と云っていたっけ。
「セロベルさん、両替商って……?」
「ああ、用があるのか? じゃあ、寄ろう。道中にある」
丁度よかった。らっきー。
両替商は、うーん。もとの世界ふうに云うと、銀行と質屋さんを足して、お金を預ける部分を削ぎ落した感じ。
手形を現金へひきかえたり、銀の塊を細かいものとかえてくれたり、宝飾品や美術品を買いとってくれたりする。
「ディファーズや、シアイルだと、領地の実りを持ち込む貴族も居るらしい。商人と違って即金だから」
ほう。
両替商は、レントの中心近くにあって、にぎわっていた。貝貨を崩すだけの窓口があり、そちらへ並ぶ。
ピアスをつけていない髪の短い男+警邏隊、というのは目立つようで、かなり注目されていた。にこにこしとこう。四月の雨亭の宣伝もしとくかな?
順番が来たのでやめておいた。
貝貨を5枚、銀貨にする。この程度の両替はたいしたことではないようで、窓口のおねえさんは笑顔を崩さず、竹のざるに銀貨を山盛りにした。
数えるのはやいなあ。えっと、かける5だから……1140?
メニューとにらめっこしつつ、ざるの中身を収納空間へ流しこんだ。1140枚でいいみたい。ぴったり、それだけ増えた。
お礼を云って列を離れた。おねえさんはにっこりして、会釈してくれた。
列の邪魔にならないところで待ってくれていたセロベルさんの許へ行く。「おまたせ」
「おお。じゃあ、いくか」
「はい。かかりのひと、お金かぞえるの凄くはやかったです」
「特殊能力か職業だろ」
そんなのまであるの?
あるらしい。職業だったら「出納」。特殊能力なら「勘定」。はー、職業って多岐にわたるのだな。
「てゆか、お前」
セロベルさんは呆れ顔をしている。「収納空間にそのまま銀貨いれたのか? 大丈夫なのかよ」
「だいじょぶ。たぶん」
どちらにせよ、お財布にはいる量ではないし。
セロベルさんはなにやらぶつぶつ云っていたが、俺は聴いていなかった。
警邏隊のひと達が集まっているのが目にはいったからだ。鎧が同じなので、壮観。
「セロベルー」
「よーう。わたし達もかりだされたよお」
ライティエさんとメイラさんだ。ふたりとも傭兵等級は満たしているし、居ても不思議ではない。
ふたりとも、警邏隊の鎧をつけてはいるが、ライティエさんはその下がいつものワンピースだ。その辺は別にいいらしい。
ふたりとセロベルさんが軽く片手を打ち合わせる。「頑張ろうねー」
……ライティエさんが居たらお弁当たりなくない?




