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「あった」
よかった。戸棚にあったような気がしたからこのメニューにしたのだ。
鉄板。四角くて、A3くらいのサイズ。
重いので、セロベルさんにとりだしてもらう。火にかけてもらった。表面に油をひく。
あったまったら、そば粉の生地をおたまに一杯半。くるっとまあるく伸ばす。
クレープだ。今回はお食事なので、厚め。俺は、生地にたまごは無し派である。
端っこがめくれあがってきたらつまんでひっくり返し、二・三秒でまないたにとる。具材をのせて包めば、ラップサンドウィッチ。
ハムほうれんそう、たまご、チーズをのせてくるくる。ローストビーフと人参酢のものをのせてくるくる。簡単で、沢山つくれて、おいしい。
できあがったものはセロベルさんに、紙に包んでもらった。おかず系をつくり終えたら、デザートだ。アップルバターふうと、豆乳とお砂糖を煮詰めたキャラメルソースふうをくるくる。パイナップルのジャムをくるくる。
ひとり、四種類を……三本づつでいいか。それにクッキーもプラスしよう。
「このくらいで足ります?」
「充分。ありがとな」
お弁当ができあがったが、量が量だ。セロベルさんでは運べない。
「配達しますよ」
「すまねえ。ありがとう」
できあがったものを収納空間へ放り込む。自分用もつくっておいた。おいしそうだから。
セロベルさんが、リエナに店番頼んでくる、と、出て行った。クッキーを人数分収納し、売りもののクッキーをかごへ詰め込んでカウンタへ置いておく。クッキーだけを買って帰るお客さんも居るから。
リエナさんはすぐに来てくれる。セロベルさんはバイト代を出すつもりだったようだが、リエナさんは、店番のかわりに晩ご飯食べさせてね、とにこにこしていた。
セロベルさんが警邏隊の鎧を着る間に、リエナさんグロッシェさんとお喋りした。リエナさんは、そういえば、と、ふくふくした手を合わせて小首を傾げる。
「マオって、お水出せなかったわよね?不便じゃない?」
「マオさん、昨日、井戸のお水で水浴びしようとしていましたよね」
「ええっ、ほんとですかおばさま?」
リエナさんへ、グロッシェさんは頷く。グロッシェさんは、リエナさんに対しては、怯えたふうはまったくないし、フードも被っていない。
「本当に」グロッシェさんは鼻先をふよふよさせる。「氾濫士を雇う予定なの」
「そのほうがいいですわ。マオ、危なっかしいから、井戸へおちてしまいそう……あ、そうだわ」
リエナさんがいたずらっぽく笑った。「あのね……」
……




