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四人ともきょとんとした。やった! 成功だ。
聴いたこともない職業なら誤魔化せると思ったのだ。キャラメイクの時に見た「職業」に、仲居はなかった。おそらくこの世界に「仲居」という「職業」はない。
ほっとした。お茶をすする。長老三人は顔を見合わせ、低声で喋る。「なかい……って聴いたことあるか?」
「ないな」
「どういう職業なのか見当もつかん」
「マオ」ナジさんが此方を向く。「その職業の加護は?」
あれだな、職業にくっついてる特殊能力。えーと……。
「状態異常に強い……みたいな?」
魔王のスキルのなかでも一番穏便そうなのを云ってみた。すると四人とも、おおっ、と驚く。
「状態異常軽減か」
「「護衛魔導士」や、「舞姫」と同じだな」
「どちらもめずらしい職業だ。「なかい」というのも、めずらしい職業なんだろう」
ああ~よかったああ、多分乗り切った。よかったよおおお。
お茶がおいしい、クッキーも。ぽりぽり食べながら長老達の会話を聴くともなく聴く。どうやら、「職業」を手掛かりに、出身地や住んでいたところを調べようとしてくれていたよう。もの凄く規模の大きい迷い子と思われているみたいだった。
えっと。大体、適職は、十歳前後に調べる。「神降ろし」という「職業」のひとが適性を教えてくれる。
「職業」によっては、体格による有利不利があって、だから身長の伸び切った十六歳から二十歳くらいに「選択」する。パラメータと特集能力も大事なんだけど、それは、各地にある「い」(井かなあ?)でお伺いを立てれば判るらしい。
たとえば、適職が「戦士」と「魔導士」で、魔力が高いし華奢だから「魔導士」、みたいに選ぶのだ。勿論、「職業」とは別に仕事を得る。だから、「戦士」でも農業をやっていいし、「魔導士」が拳でファイトしたってかまわない。
ただ、すべての職業には「職業加護」がついている。戦士なら体力強化、魔導士なら魔力強化、というふうに。職業加護があるとないとでは大違いだから、かなり不名誉な名前の「職業」しかなくても選択するものみたい。
選択は簡単。「い」で宣言するだけ。めでたく職を選ぶと、以降パラメータに表示される。仕事を得る時に有利であれば伝えるけど、「職業」を云わなくても雇ってくれるところはある。恐らく、日本での「資格」みたいな扱い。
適職診断と宣言は記録されるのが慣例で、「い」での記録をさがせば少なくとも職を選んだ場所は解る筈、ということ。
「だから、マオのいた場所も解るかと思ってね」
「はあ。このお菓子おいしいですねえ」
気付くとトレーが空だ。ダストくんがくすくすしながら自分の分をくれた。ありがとうと云って早速ぽりぽり食べる。
長老達が微笑んでいる。ナジさんもクッキーをくれた。「問い合わせてみるから、暫くうちに居なさい」
「え。いいんですか?」
「困っている子を放っておいたらばちがあたる」
でもでも、既に随分お世話になってしまっている。うーん、と考えてから、お金を持っていることを思い出した。
「あの、しゅくはくひよう、はらいます」
「ん?気にしなくていいんだよ」
「でも、持ってるので……これで足りますか?」
ポーチからお財布を取り出した。中身を掴みだしてじゅうたんの上へ置く。貝がらが数枚と、銀貨も数枚。貨幣価値が解らんので、とりあえず掴めるだけだした。
顔を上げると、四人が目を瞠っていた。




