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ダストくんがぶうたれた。いや、いいと思うよ「戦士」。魔王の二億倍ぐらいまとも。
ナジさんは話を戻す。
「これに、マオの知っている場所はあるかな?」
ない。頭を振る。大人達は顔を見合わせた。
ナジさんが云う。「マオ、これはとても不躾なことだというのは理解しているが……きみの「適職」、もしくは「職業」はなんだい?」
きた。
やばい。
魔王でーすなんて云った瞬間祇畏士がとんできて(それこそ物理的に「飛んで」来るかもしれん)滅却される可能性がある。というか魔王だなんて明かしたら間違いなく何れは滅却だ。悪い職らしいし。
口を噤む。なんか適当な職業を云うか?いや、さっきのナジさんのくちぶりだと、「職業」を選択したら、それに応じたスキルが手にはいるらしい。魔王にもついてきたもんな。
てことは、ここでなにか適当な職業を云って、その職業だったらできる筈のことができなかったりしたら、アウトだ。
上目で大人達を見た。なにかもっとヒントを……。「あの」
「なんだい?」
「職業をきくのって、ぶしつけなことなんですか?」
「ああ、うん……なかにはその……少々、なんというかな、当人にはとても不名誉に感じる場合があってだね……」
ほう。
ああ、「ごろつき」とか、「詐欺師」とかあったわ。ダストくんみたく、適職がひとつしかなくって、というパターンか。それは辛い。
ん? でも、じゃあ、……そっか、キャラメイクの時に強制的に選ばされた。多分、この世界の人間はみんななにかしらの「職業」を持ってるんだ。「ごろつき」や「詐欺師」しかないからと云って、それも選ばないという訳にはいかない、と。
首を捻る。言い抜けかたは思いつかない。
「そうだ」
ナジさんがぱちんと手を叩いた。内心びくびくしていたのでぴょんと体が跳ねる。ナジさんが一瞬停止した。「す、すまない、脅かすつもりじゃなかったんだ」
「あ、はい、だいじょぶです」
舌を噛んだ。痛い。涙が滲む。昔っから滑舌がよくないのだ。焦ると噛む。
ナジさんは眉をハの字にした。
「すみません、なんですか?」
「ああ、……大丈夫かね?」
「はい。痛くないので」
大人達は困り顔になり、ダストくんは仏頂面をした。何?
なんなのかよく解らないが、ナジさんが喋り出したのでそちらに集中する。
「こちらの職業を明かそう。シアナンは「採掘士」。ラトは「戦士」。わたしは外れ職と名高い「牧童」だ」
「おいおい、わたしの体格で「採掘士」は外れなんだぞ。お前は職業加護のおかげで山羊をどんどん増やしてるくせに」
……ほんとにいろいろある。やばいな、ますます言い抜けられそうにない。
ナジさんはにっこりした。「ま、こんなふうに、わたし達も大層な「職業」ではないんだ。適職もひとつだけだったしね。だから、マオがどんな職業でも笑わない。それともまだ「選択」は済んでいないかな?」
また、解らない単語が出てきた。
ある程度の年齢に達したら、「職業」を「選択」する、という感じなのかな?
済んでない、というか?でも、そうしたら、じゃあ適職を慥かめようなんて話に……そうしたら「魔王」がばれる。
ええい、一か八かだ。
「な、「仲居」です!」




