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セロベルさんが戻り、お弁当を包んで、運んでいく。おなか空いた。ご飯食べたい。
つくれどもつくれども俺のおなかにはひとかけらもはいらない。拷問か?
たべながらつくるのはなんかやだ。感覚的に。だから、とにかく頑張ってはやくつくった。
ローストビーフサンドウィッチは、見たら食べたくなった、と注文するひと多数。足りないかもしれないので、お鍋で牛ブロック肉を焼く。
ぶ厚くて蓋がぴっちり閉まる鉄鍋だから、オーブンよりは味が落ちるかもしれんが、まずくはならない筈。グレイビーソースもつくらないといけない。おなか空いたよう。香味野菜いれて、蓋をした。薪を少し減らす。
「パン!」はっとした。「セロベルさんパン! 足りない。買ってきて!」
セロベルさんがあわてて出て行った。ええ? 昨日も今日もいっぱい買ったよ? ……それ以上に俺がくってるのか?!
やばい、おなかすいて頭がまわってない。低血糖になりそう。昔から低血糖になりやすいのだ。検査入院したけど原因不明で、とりあえず食べて対処するしかない。
そろそろ電源落ちるぞ。やばい。
パンにお肉とキャベツをはさんでソースかけて紙でくるんでこっちのパンは厚切りのお肉とチーズ。豚肉焼きすぎたらかたくなる!お皿に盛って、トマトそーすかけて、とうもろこしのすーぷ……。
思考は停止したが体は動いていたようだ。気付いたら椅子に座っていて、両手にクッキーを持って口いっぱい頬張っていた。あ、あぶねえ、おちるところだった。
嚥み下す。頭にぼんやり、かすみがかかったみたいだ。四肢が強張って、細かく震えている。冷や汗が酷い。ここまでのは久しぶりだな。やば。くっきーおいしい。しっとり系。
ぶどう糖の飴があった。はず。
収納空間をさぐる。あれ? 外出の時は、小袋に分けたやつをかならず持ってたのに、鞄のなかにない。忘れた?
ぼーっとしていた。セロベルさんが、アーチをくぐって厨房へとやってくる。「マオ、大丈夫だぞ、帰ってもらったから」
なにが? なにに?
仰ぐ。クッキーの天板がテーブルに置いてある。両手を伸ばして引っ掴み、口へ運ぶ。
セロベルさんは舌を打った。
「ったくよお、ああいうばかは一回目覚めの滝にでも叩き込んでやりてえよな」
??
もしゃもしゃとクッキーを噛む。「……はあ」
「お前も我慢しなくていいんだぜ。辛抱強いのも考えものだな」
頭をぽんぽんされた。……??




