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包み紙が足りない。セロベルさんに、市場へ走ってもらった。こういう時人手が足りないと困るな。
とりあえず包めた分をトレイへのせ、ワゴンで運んだ。
ライティエさんとメイラさんが居る。ふたりともまだ食事中だった。「マオー、やるじゃん。これ凄くおいしいよ」
「わ、お弁当ってそれ? そんなにおっきいと思ってなかったわぁ」
お弁当をうけとりにお客さんが並ぶ。カウンタに包みを積んだ。「エスター100個ですよ」
「この量なら安いな」
「得した」
傭兵ふうのお兄さんふたりはほくほく顔でエスターを置き、包みを持っていく。年配の男性や、子連れの女性も、エスターを置いて包みを持っていった。よく考えたらお客さんが二十人でお弁当が25個売れるって。
ライティエさんもやってきたが、ふふっと笑って次のひとに譲った。「わたし、いつつ注文したから、あとでもらったほうがいいね~」
「すみません、包み紙切らしちゃって」
ライティエさんが大量発注していたらしい。
……あれ、でも、お弁当を買わないひとも居るから、あれえ?
ほかにも沢山食べるひとが居るのだろう。俺だってこのおべんとならひとつじゃ足りない。
銀貨を支払ってお客さんが数組帰っていった。おいしかった、また来る、と云ってくれた。嬉しい。
いれかわりのように新しいお客さんがはいってくる。五人だ。定食・クッキー・お弁当しかないのでその旨説明する。でも、帰るひとは居ない。
汚れたお皿をワゴンへのせて下げる。グロッシェさんを呼ぶとすぐ来てくれた。「お皿、洗ってもらえますか」
「解りました」
お皿はグロッシェさんに丸投げだ。お肉焼かないと。ソース足りない!
お鍋をもうひとつ用意して火にかけ、トマトソースをつくる。煮込みが短いほうがおいしいやつでよかった。にんにくと生姜はさっき崩潰で微塵にしたのが収納空間に沢山あるし。
クッキーは天板入れ替えればいい。ローストビーフも足りる。足りなかったら別のつくる。
「マオさん、お皿洗いあがりました」
「えっ」
グロッシェさんのほうを向く。
……清掃人の真価を見た気がする。お皿はすでに綺麗になっていて、しかもかわいていた。ぴっかぴかだ。「ありがとうございます!拭くのはやいですね」
「魔法ですよ。家政関係の職業だけがつかえるんです」
なにそれ便利! いいなあ。人間食器乾燥機じゃないか。凄い。うらやましい。




