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お鍋を火にかける。すぐ出来るやつなら、とうもろこしのだ。とうもろこしをどんどん崩潰で潰しながら鍋へいれ、お塩とこしょうで味をつける。
平鍋をかけて、お肉を焼きにかかった。
アーチから顔を出す。「豚肉食べられないかたは?」
ひとりもいない。よかった。
市場で買った豚肉を厚めに切って、筋切りをし、軽く塩こしょうして揉む。それを焼いた。手を洗って、お皿の用意。
セロベルさんが駈けこんできた。「客って?」
「十人。今お食事準備してます。銀貨一枚の定食」
「冗談だろ。ああ、お茶出したほうがいいな」
セロベルさんはそう云って、がちゃがちゃとお茶を淹れた。魔法で水出して魔法でお湯沸かしたぞこのひと。
セロベルさんは気が利いて、オーブンからクッキーを救出してくれたうえに(危なく焦がすところ)、お皿とパンかごもぱっぱっと棚から出してくれた。お肉につきっきりだから助かるー。
焼きあがったお肉をお皿へのせ、トマトソースをたっぷりかける。パンをかごへいれて、煮立って甘ーい香りのしてきたスープを深皿へつぎ、クッキーは袋がないので紙にのせてくるむ。市場でサンドウィッチ用のが売ってあったから、なんとなく買ったのだ。朝の俺えらい!
お匙と、フォークと、ナイフ。全部トレイへのせた。クッキーは、お茶っ葉のと、焼きたてのラードのやつの半々。お客さんがどっちの匂いにつられたか解らない以上、両方出さざるを得ない。
セロベルさんが戻った。トレイをワゴンへのせて運んでゆく。ちなみにワゴンは三段で、トレイ六枚なら一度にのる。
お肉全部焼けた。お皿にのせてソースかけて、クッキー、スープ、パンかご、お匙とナイフフォーク。
終わったと思ったのに、セロベルさんが戻ってきてトレイをワゴンへのせつつ云った。「ライティエとメイラが来たぞ。ほかの傭兵も連れてる。定食十人前」
えっ。
スープが足りない。とうもろこし沢山買っておいてよかった!
お鍋にとうもろこしを継ぎ足して、お肉を切って、焼いて、クッキーが目減りしていくのを切なく思い、パンかごをいっぱいにする。トマトソース足りるかなあ? 俺が食べる分に。
お肉は要領を掴んだので、足りなくなりそうなクッキーの補充にかかった。生地は、たまご、ラード、植物油、粗糖、お塩、お水と小麦粉、片栗粉。こねないように混ぜて、手で成形して、天板へ並べたらオーブンへ。
手がべたべたする。洗って、お肉をお皿へひきとり、ソースをかけて……。「セロベルさん、できました」




