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そこまでせまくもなかったので、厨房のテーブルをつかうことにした。
オムレツとー、パンも沢山ー、スープにチーズいっぱいいれちゃおー。
いただきますと手を合わせてからたべはじめる。俺が食い潰しそうだなあとちょっとおもった。
うまーい。こっちの世界の食材旨い。トマトの味が濃い!
半分くらい食べたところで、グロッシェさんがやってきた。ばけつと箒を手にしているから、朝のお掃除をした後かな。「朝ご飯できてますよ」
「あら……ありがとうございます」
グロッシェさんは掃除道具を置いて、手を洗う。流しみたいなのはあって(石製)、汚れた水は排水される。外の溝へ流れていくのだ。
グロッシェさんの食事を整えた。セロベルさんのも出しておこう。
グロッシェさんが椅子によじのぼった。動きが可愛いなあ。
「わぁ……」
グロッシェさんはフードを外していないが、耳が動いたのが解る。「凄いですね」
「はあ。あ、苦手なものは残して下さいね」
食べるので。
グロッシェさんはたまごも食べられるそう。でも、量が多いとあとでお腹が痛くなるので、と、最初に三分の一くらいをパンへのせ、あとは残した。腸詰めも、朝からはきついとのこと。ひきとる。
「苦手なものは出さないようにするので、教えて下さい」
「えっと。……お肉や、お魚は、たまごみたいに沢山は食べられません。チーズも得意では……味は好きなんですけれど……」
「解りました。気を付けますね」
グロッシェさんはオムレツをのせたパンをもぐもぐしつつ、こちらをちらちらうかがう。
デザート用意するの忘れてた。んー、今更出すのもなあ。それにまだご飯が残っている。
「マオさんって、料理関係の職業なんですか?」
グロッシェさんがか細い声で訊いてきた。
「あ。ごめんなさい……主人も、わたしやセロベルの苦手なものを訊いてくれて。絶対に出さなかったんです。体に毒だからって……」
「えっと、料理関係ではないですね」
魔王だもの。なに関係? 魔物関係かな?
ちょっと気が沈んだ。魔王だもんなあ。すっごく危ない橋を渡り続けている。
セロベルさんが来た。「セロベルさん。ご飯できてる」
「ああ」
セロベルさんはなんだか困ったみたいな顔をしている。「マオ。リエナが、お前と話したいって」
「え?」
危うくチーズが気管へはいるところだった。あぶねえ。
リエナさんが話したい?なにを。




