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メーデさんが箱の蓋を開ける。おー、いつ見ても貝貨がたっぷり。
「じゃ、こんだけだな……まず、到来花。貝貨4枚。思案草は、ふた株凄くいい状態のがあった。なんで、その分おまけして、銀貨100枚でどうだ?」
充分だ。頷く。
メーデさんはにっこりして、お金を箱から取り出し、カウンタへ置いた。「最後に、杣人草。随分量があったし、状態がよかったからな。貝貨23枚でどうだろう」
ああー、あの匂いを我慢して、相当な量を採ったからな。最後意識朦朧だったもん。でも、頑張った甲斐はあった。
「それでいいです。あっ、サローちゃんから、お薬もらったんですけど、高いものだったら」
「ああ、嘔吐剤だってな。かまわんよ。この辺は牧場も少ないし、売れ残りだ」
「牧場?」
「ん? 知らんのか? トゥアフェーノは神経が細いから、哀しんだり辛かったりが過ぎると、その辺のものを飲みこんじまう。トゥレトゥススもそういう傾向にあってな。食べものならいいが、石を飲みこんだばかりに死んじまう可哀相なやつもいる。だから、様子がおかしい時にはまず嘔吐剤を服ませるんだ」
へえー、その為の嘔吐剤なのか!
そう云えば、サローちゃん云ってた。体重100kあたり5mlで確実に吐く、って。人間用ではないのな。
メーデさんはにこにこ顔でおそろしいことを云う。「間違って服んだらえらいことになるぞ。一滴で二・三日、くいものは受け付けなくなる」
「うわあ」凄くいやそうな声が出た。頭を振る。「絶対間違って服まないようにします」
「ははは、気を付けるんだな。よし、これで全部だ。慥かめてくれ」
えっと、貝貨が27枚。銀貨が100枚。「……慥かに。ありがとうございます」
「こちらこそ、いい薬材をありがとう。またいつでも持って来てくれよ、別嬪さん」
今のは純粋に誉めてくれた感じだったから喜んどこう。お金は、これは四月の雨亭の資金だから、……。
ほかにないので、クッキーの空き袋にいれた。リユース大事。
振り返る。
「セロベルさん、これ、護衛料」
セロベルさんは唖然とした。
?
……あっ、鐘の音がかすかに聴こえる!朝ご飯の用意!
お金のはいった袋をセロベルさんへおしつけ、外へ出た。ご飯つくらなきゃ、というか食べなきゃ。低血糖起こしそう。お腹空いたああ。
四月の雨亭を目指して歩く。すぐにセロベルさんが追い付いた。くっ、コンパスの差か。
「マオ!」
「たまご買うので市場に寄ります」
「そうじゃなくて、お前、これ、護衛料って」
「え、だってそういう話じゃなかったでした?」
「ハア?」




