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それはなんとなく理解していた。だって、傭兵等級2と3だもん。
さっきの特殊能力は、自分を中心にした円のなかに居る生きものの位置がある程度解る、というもの。
ライティエさんのは精度が高いし、範囲もひろい。生きものの大きさもおおまかにだが解るそう。
「だから、ライティエが居れば、魔物からの不意打ちは避けられる」
「すごい」
「かわりに、魔力の消耗が激しい。だから常につかってる訳じゃない」
だとしても役に立つ能力だ。
「マオくーん」
ライティエさんが手を振っている。「こっち、杣人草があるみたい。香りがするー」
「はい、行きます」
セロベルさんと、ライティエさんが居るところへ向かう。メイラさんもやってきた。
成程、あまーい香りがする。甘いというか、甘ったるいというか、むせそう。
メイラさんが口許を覆った。「うー、相変わらず酷い匂い。こっち?」
「こっちのほうじゃないかなあ」
「こっちだろ」
香りが強いから、でどころが解りにくい。それも、杣人草が高く売れる理由のひとつだろう。俺もどっちから香りがしてるか解らん。
マントで鼻と口を覆って、暫くうろうろした。この辺?
ううううううわ。眩暈してきた。これだ。
「ありましたあ」
一瞬マントをはなして三人へ伝えた後、息をとめて両手で杣人草を千切り、収納空間へぶち込んでいく。ぐぐぐ。苦しい。
もう無理だ。マントで口許を覆う。浅い呼吸をする。だいぶ採れたかな。
三人は遠巻きにこちらを見ていた。近寄りたくないのだろう。収納空間へいれるのは俺ひとりで出来るし。
頑張ったが、半分も摘めずに杣人草の群生から離れた。無理だ無理。すげー匂い。肺が甘くなりそう。
げほげほ咳こむ。メイラさんが後退った。
ライティエさんが水を出してくれて、それで手をゆすぐ。「頑張ったねー」
「マオー、根性あるじゃん」
へへへと笑った。
こんなものかな?
到来花はかなり採集できているし、杣人草があれだけ採れたら充分だ。少なくとも、傭兵ふたりへの賃金以上にはなる。
空を見た。まだまだくらい。どうしようかな。
ライティエさんが云った。「もう帰る? あんまり沢山いれると、魔力の枯渇を起こしそうだし」
「マオは魔力どのくらいなの」
「メイラ」
「あ……ごめん」
メイラさんが頭を掻いた。
俺はちょっと考えてから云う。「もう充分です。帰りましょう」




