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セロベルさんと、地面を見ながらうろつく。「メイラさん、灯なくていいのかな」
「あいつは夜目がきく特殊能力持ちだ」
そんなのもあるのか。へえー。
到来花自体は割合すぐに見付かった。が、薬の材料としてはつかえないやつだ。ひとつひとつ、隅々まで見て確認しないといけないから、ちょっと手間。
セロベルさんが先に薬材になる到来花を見付けてくれた。お礼を云って、摘みとって収納空間へいれる。
「すぐに効力がなくなるぞ」
「時間停滞なので」
「ああ、それで」
到来花の茎は、千切るとべたべたする。手を洗いたいな。
メイラさんが戻ってきた。「こっちに群生してるよ。ライティエも呼んでくるから、あんたたち先にさがしてて」
明るいところを歩いているみたいに軽い足取りでライティエさんの許へ向かっている。夜目が効くスキル、便利。
メイラさんに教えてもらったところには、到来花が沢山あった。また、地味な確認作業だ。ライティエさんとメイラさんもやってきて、確認にはいる。
こういう作業のお代含まれてるのだろうか。雇い賃。
「セロベルさん?」
ああと気のない返事があった。セロベルさんは細かい作業が好きなのか、到来花に集中するあまり口が半開きだ。こそっと耳打ちする。「ふたりを雇ったお金って、こういうさぎょうのお代もふくまれてるんです?」
「ああ」セロベルさんはこちらを見もしない。「銀貨55枚づつ。薬材採る時は手伝う、ただし売り上げは分配しねえって条件だ。ほら、あったぞ」
花を渡され、収納空間へいれる。あ、これもつかえるやつだ。
ぶちっと千切って仕舞いこんだ。セロベルさんは、お経みたいに単調に喋る。
「俺がいつもやってるのは、銀貨10枚くらいで働く代わりに、売り上げから分配してもらうってやつ。傭兵等級2だと、信用があるから、それなりに稼げるんだぜ。かけだしは、そういうのはしちゃいけねえ」
「どうして?」
「ろくな稼ぎにならない。手間ひまかかって金にならねえ仕事に、かけだしで、傭兵等級の為に実績がほしいやつらを、うまいことつかう手だ。それに」
セロベルさんがこちらを見た。「めずらしい薬材の採れる穴場があって、そこに傭兵等級少ないやつを連れていくか? 場所を覚えられて、横取りされるかもしれないんだぞ」
あ……たしかに。
傭兵等級は信頼の証でもある。このふたりは傭兵等級が高いんだろうか?
セロベルさんがささやいた。「ライティエは3、メイラは2だ」
かなりきちんとしたひと達なのな。理解した。




