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入山前、最後に、と、サキくんは薬材採集に行きたがった。
晩ご飯が終わって、俺とサキくんはふたりでレントを出る。ふたりとも無言で、ゆっくり歩いた。第二の丘は、傭兵達が豚狩りに精を出したからか、豚は見なかった。
薬材採集とは名ばかりで、俺達は草地でごろごろして、星を眺め、お喋りした。他愛もないことを、笑いながら、冗談まじりに大袈裟に。
サキくんは手先が器用で、薬効のない到来花で冠をつくって、俺にひょいと被せる。「マオさんは綺麗だな」
「うん?」
「勿論、顔貌もですけど、心根が。僕は卑怯で下劣だ」
そんなことないよとサキくんの頭を撫でる。つやつやの金髪が指に絡まった。サキくんは、いつもそんなふうに見せないだけで、凄く傷付いてる。それが解った。
到来花を摘んだり、杣人草と格闘したり、思案草を掘り起こしたりもした。なんだか、やけに植物が元気だ。
サキくんがふざけて俺に抱き付き、そのままふたりして倒れる。
気配がした。
女の子の声がする。俺達は体を起こす。近くの繁みから、髪の長い女の子が出てきた。十歳くらいで、シャツに、丈の短いスカートとニーハイソックス、厚手のローブ。前髪は目の上で切り揃えられていた。
「あ」女の子はくるっと背を向ける。「ごめんなさいなのだ、おにーさんたち。気にしないで、つづけて」
なんか勘違いされた。俺は慌てて立ち上がり、服を整える。サキくんもだ。夜目にもはっきりと、サキくんは赤くなっている。大人びていてもまだ子どもだから、こういう誤解をされると相当はずかしいだろう。
「あの、そういうのじゃないから」
「? ……そうなのだ?」
女の子は振り返る。ぐいーっと大袈裟に首を傾げてから、姿勢をただした。「じゃあ、このへんに、トゥアフェーノ、いなかった? のだ」
なんだか独特の喋りかたと間である。面白いなあ。
見ていないので、頭を振った。女の子は頷いてから、あ、と口を覆う。
「だめなのだ。今の、なし。おにーさんたち、今のはないしょ、なのだ。カクレンボで、ひとにきいたら、はんそくだった」
「あ……隠れん坊してるの?」
「うん」
ここで? この時間に?
もうよなかなのだが……もしかして、夕がたくらいに隠れん坊をしていて、意地悪で仲間に置いて行かれたのではなかろうか。
心配になったので云った。
「あの、俺達、薬材採集に来たんだ。もし、あれだったら、お家まで送るよ」
俺の言葉に、サキくんがこくこく頷く。サキくんも、十歳くらいの女の子が夜半に第二の丘に居ることに、違和感を覚えたみたいだ。
女の子はゆっくり一回、頭を振った。
「だいじょーぶ、なのだ。コマ、ともだちときてるから」




