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サキくんは、微笑んだ。それからきょろきょろする。「……あ」
サキくんは、ひょいと、なにかを指さす。そちらを見た。プラムの木の辺りだ。去年の暮れ頃に、移植されたもの。バラ科の木って好きだな。
「マオさん、面白いものを見せてあげますよ」
「え?」
「警邏隊には内証にしてくださいね。セロベルさんにも」
サキくんは甘い声でささやいて、プラムの木へと近付いていった。手前に、大地魔法で穴を掘っている。結構な深さの穴を掘り終えると、サキくんは風魔法でプラムの枝を数本落とす。何本かの木から少しずつ切り落としているから、木に悪影響はないと思う。それと、松の枝も数本。あとは、落ちている枝や、葉っぱも集めている。
俺は、サキくんへ近付いていく。サキくんは、穴に木の枝や葉っぱをまとめてつっこみ、息を整えていた。「サキくん?」
「……マオさんにはもらってばかりだから、僕もなにかあげたいんですよ」
サキくんはこちらへそう微笑んで、穴の上へ手をかざす。「僕にできることなんてたかがしれているけれど、やらないよりはましですよね?」
還元、とサキくんが云うと、穴のなかがきらきらで充たされた。俺は還元が好きだ。きらきらしていて綺麗で、なんて云うか、蛍とか花火みたいな感じ。
俺がしょんぼりしていたから、慰めようとしてくれているみたい。サキくん、優しい子だな。きらきら、堪能しよう。
と思ったのに、サキくんは穴にあしで土を被せ、きらきらを封じ込める。幾らかそれを逃れたきらきらが、宙を舞った。
「……どうしたの?」
「やっぱり、見たことないんですね」
慥かに、こういう情況は初めてだ。
……いや、なんとなく覚えがあるぞ。これ、廟でやってた還元に似てる。鉄塊を還元して、絹の袋に素を集めてた。あれは、放っておいたら釘になる。
じゃ、これも、なにかになる?
俺が目を向けると、サキくんはいたずらっぽく笑って、声を低めた。
「還元士なら誰だってできるけれど、普通は袋にいれてつくりますから、こう云うのはめずらしいでしょう? 原初の還元のひとつですよ」
いや、袋のほうも見たことないです。木の枝を還元したらなにになるんだろう。植物の種とか?
サキくんが穴に被せた土のすきまから、素がたちのぼっている。木陰になっていて、きらきらが一層綺麗に見えた。
十分もせずに、きらきらが出てこなくなった。俺達は、適当に草むしりをしたり、お花を摘んだり、最後は座り込んで、木に凭れ、ただ木漏れ日を眺めていた。こういうぼーっとする時間、大切だなあ。最近、張り切りすぎていた。ほーじくんのことを考えないように、別の心配事を詰め込んでいた。
サキくんが立ち上がったから俺もそうした。サキくんは俺の手をひいて、穴までつれていく。穴の縁に両膝をついて、サキくんは大地魔法で土を大半とり除いた。
「あ」
「マオさんの好きなもの、僕は、これくらいしか用意できませんけど」
穴のなかには、とろっとつやのある光を放つ、琥珀があった。




