表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/6711

126

 

 傭兵仕事は儲かるのかもしれないが、あの調子ではセロベルさんが体を壊すのはそう遠い話ではない気がする。というか、かなり痩せていたし、もう体を壊している可能性はある。どうにかならないものかな?

 前庭を抜けた。

 食堂に這入ると、セロベルさんがカウンタに両肘をついているのが見えた。思案げだ。

 物音に我に返ったか、セロベルさんがこちらを向く。「ああ、マオ……ダストっ!?」

 がたんと椅子を蹴倒してセロベルさんが立ち上がった。おっきいなあ。

 そのままカウンタの向こうから出てくる。セロベルさんは左右違う色の目に、同じように涙を溜めていた。

「だーすーとーおおお!」

「ふぎゃっ」

 ダストくんが熱烈に抱きしめられた。なにこれ?


 セロベルさんは泣き出してしまって、ダストくんがそれを必死で宥め、近くの椅子へ座らせる。ハーバラムさんは口あんぐり。俺も似たようなものだ。

 セロベルさんはダストくんへしがみついて脇腹へ鼻先を埋め、ぐすぐすと泣いている。ダストくんは片腕を挙げた格好で凍結。「ダストおおお、久し振りだなあこのやろううう!」

「せ、せろべるさん、なきやんでください」

「なんだよさみしいぞ! 俺とお前のなかだろお?! 前みたいにせりぃってよべよばかあ」

 ダストくん、すっごく絡まれてる。汗をかいているなあ。

「ダスト坊……」ハーバラムさんが低ーい声を出す。「そのひとは?」

「あ、えっと、御山(おんやま)で知り合って。セロベルさん。先輩。戦士科で補助の指導員やってて」

 御山(おんやま)で補助とはいえ指導員できるくらい優秀なのか、セロベルさん。すげー。

 しかし、セロベルさんは入山経験者とは思えない涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、ダストくんへくってかかった。「なんだよつめたいなだすと! おれはおまえにっ、は、はじめて……あとせりぃってよべばかあ!」

「呼ぶから不穏当な発言やめてセリィさん」

 ダストくんの声が震えていた。

 ふーん、とハーバラムさんがひんやり云う。「はじめて……?」

「おれはだすとではじめて……はじめて生徒にまけたんだあああ」

 セロベルさんはダストくんへますますしがみつく。「立派になったなダストお、こんな胴回りも太くなって! 強くなったんだろ! セリィせんせは鼻が高いです!」

「あーもううややっこしいんだよおセリィさんはあ!」

「いつものダストだあああだいすきいいいいいいい」

 ダストくんってあれなの? 歳上の男性キラーなの?

 それって俺も射程圏内じゃん。は、は、は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[一言] そうか、この小説のヒロインはダストだったのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ