114
あれじゃん?
職業指定で募集かけてるところだって、能力証明書が必要なんじゃん?
魔王、詰んでる。
薬材はんたーやるしかないかな。
職業不問で能力証明書もいらない仕事ってそれくらいだろ。……傭兵を雇うのに身分証が必要だったらまじでお仕舞だ。
「ほらー、走らない!」
ぼーっとしてた。
後ろからなにかがぶつかってくる。膝ががくっとなって、前に倒れた。手をつく。
振り返ると、五・六歳くらいの、金髪の男の子がしりもちをついている。みるみるうちに顔を歪め、泣きだしてしまった。
「チェセール……ああもう」
人混みを掻き分けて出てきた、中学生くらいの男の子が、その子を抱え上げる。同じような色合いの金髪だ。兄弟らしい。「みうにいちゃあああ」
「はいはい。……あ、ごめんなさい、弟がぶつかりましたよね」
「あー、だいじょうぶです」立った。「ぼく、けがしてない?」
話し掛けてみたが、無視である。弟くんはお兄ちゃんへしがみついてわんわん泣いていた。
ふたりとも、厚手のチュニックと細めのずぼん、やわらかそうな質感のフード付きローブに長めのブーツ、という出で立ちだ。チュニックの丈は、裾野でよく見てきたものより短い。色合いは全体的に白っぽかった。お兄ちゃんのほうは、腰に数珠みたいなものをさげている。……途中に釘が刺さってる数珠。なんだろ?
「チェス、謝りなさい」
「うえ。だって、にいちゃん、うええっ」
「走らないって兄ちゃんと約束したよな?」
「ご、ごめんなしゃい」
「ぶつかったひとに謝るの。ほら」
弟くんがこちらを向いた。涙をこらえ、しゃくりあげながらぺこっと頭を下げる。「ごめんにゃしゃい」
「うん、もういいよ。ごめんなさいできて偉いね」
弟くんは泣き笑いになって、お兄ちゃんへしがみついた。
お兄ちゃんからも頭を下げられた。ザ・金髪という感じの色だ。綺麗に撫でつけて、編みおろしにしている。ピアスは兄弟どちらもつけていた。
「ほんとにごめんなさい。ちゃんと見てたつもりだったんですけど、走って行っちゃって」
「みゅう兄ちゃんがおててつないでくんないんだもん」
「チェス、お前なー」
弟くんはお兄ちゃんへほおずりしている。もう涙は引っ込んだようだ。「ちぇすはみゅうにいちゃんをまもるんだよ。だからおててつなぐの!」
「もー」
かわいいなあ。
笑ってしまった。お兄ちゃんと目が合う。あちらもにやっとした。
主要キャラその4です




