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根菜と羊肉のスープは、羊肉を骨ごと、弱火で半日煮込み、澄んだ羊骨だしをとっているそう。
根菜は大き目に乱切りして、羊の油でざっと炒め、だしをいれて火が通るまで煮込み、だしをとったあと骨から外しておいた羊肉をいれて、お塩で調味する。
「手間がかかってるんですねえ」
「そのほうがおいしいからね。おいしく食べないと、天に叱られちまうから」
「クッキーもおいしかったです」
「あれはね、小麦粉と片栗粉を半々でね……」
話し込んでしまった。
引き留めてすみませんと云ってもおばあさんはにこにこして頷くだけだ。ひょいとハーバラムさんを仰ぐ。「ハーバラムちゃん、この子いいねえ、食欲旺盛で。うちで雇いたいくらい」
おお! 早速就職チャンスが!
喜んだのも束の間、奥から女の子が出てきて冷たく云い放った。「おばあちゃん、うちにそんな余裕ないでしょ。大体そのひと……」
??
冷たい眼差しを注がれているのですが?
結局、女の子はなにを云うでもなかったが、ばかにしたように鼻を鳴らした。お眼鏡にはかなわなかったらしい。
お会計を済ませて外へ出る。
ダストくんとハーバラムさんは、間違って釘でも飲みこんだみたいな顔になっている。なにか口に合わなかったのかな?
ハーバラムさんが努めて明るく云う。「じゃあ、お土産買いに行こうか? 買い付けは、向こうの都合で、明後日なんだよねえ」
「はい。どこで買ったらいいか解らないので、助かります」
お目当てのお店はすぐ近くだった。
大通りの北側は、おもに露店が立ち並ぶエリアだ。屋台みたいなのも沢山。所謂、市場かな。
そこから一筋東へずれる。暫く南へ行くと、立派な門のお店があった。お塩屋さんらしい。
馬車が沢山乗り付けているし、業者さんじゃないの? と思ったが、一般客でも買えるらしい。
「塩なんかどうするんだ?」
「おみやげ。ダストくんから、村のひと達に渡して」
順番待ちの間にそんな会話をした。ダストくんは、お前って、と云って、頭を撫でてくる。続きは云ってくれなかった。
順番がまわってきた。お塩はつぼにはいって売られていて、1㎏あたり銀貨4枚。容器を持ってくれば割引してくれる。
容器はないのでつぼごと買うしかない。一番大きいのは4㎏のだそうなので、それをふたつ買って、馬車まで運んでもらった。銀貨34枚のお買いものだ。2枚はつぼ代。
収納空間へ直にいれたら、容器を持ってきたってことで割り引いてもらえるのかなあ?
 




