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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
買いものに行ったら帰り道が異世界につながっていた
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 熱くて辛いのをはふはふ食べた。粗方食べ終わった頃に、お茶が配られる。紅茶なのかな? お砂糖たっぷりのミルクティだ。辛いののあとにはありがたい。

 食事の間に日が傾いてきていた。片付けは男の子たちがやっている。そろそろ戻ろうかとナジさんがいい、シアナンさんが馬車のほうへと歩いていった。

「マオ、今夜泊まるあてはあるのかい?」

「ないです」

 別に隠す必要もないので正直に明かした。ナジさんはうんうんと頷く。「うちに泊まるといい」

「ありがとうございます」

「小さな村だからたいしたもてなしは出来んよ」

 寝るところがあれば嬉しい。魔物が来なければもっといいな。

 男の子達が水を持ってくる。口をゆすげということらしいのでそうした。そのあと、トイレをその辺で済ます。

 準備ができて、馬車に乗った。着替えの時つかった馬車だ。前のほうに子ども組が、後ろに大人組が乗り込む。シアナンさんと、ナジさん、もうひとり名前の解らないおじさんは載らなかった。御者なのだろう。

 子ども組に混ぜられ、むっとしていると、ダストくんに手を引っ張られる。「マオはこっち」

 座らされた。ダストくんと別の男の子の間だ。この子は髪が短い。飾りをじゃらじゃらつけていた。

「セムだよ。宜しくマオ」

「宜しくどうぞ」

 ぺこっと頭を下げると男の子達がくすくす笑った。

 馬車が動き出す。男の子達がなにやらぺちゃくちゃお喋りを始めたが、内容がよく解らないので置物になるしかない。どこの誰が美人だとか、隣のくみ? の誰かが結婚したとか、そういう話を聴き流す。

 ぼんやりと、この状況は覚えがあるなあ、と思った。同級生の会話についていけなくて、ぼーっとしている感じ。


 ✕


 小学生から高校生になるまで、子役をしていた。

 きっかけは母の友人。芸能事務所に勤めていて、子役がインフルエンザでダウンしたから、代打で来てくれない?と頼まれたこと。帰りにケーキを買ってあげると云われてついていった。

 よく解らないまま台本を渡されて、衣装を着けたりした。

 出番はすぐ終わった。端役も端役だったから。でも、とちらなかったし、度胸があるからと、正式にスカウトされた。

 またケーキ食べたいなあ、としか考えずに子役になって、あんまり向上心なく色々とやった。映画やドラマに出たら群衆のうちのひとりとか、主人公の同級生とか(画面の端で見切れてる)、せりふはあってもひとことふたこと。それも、「ばいばーい!」とか、「おはよー!」とか。一番大きな仕事は子供服のモデルで、でもメインの子はほかにいる。広告でも見切れていて、自分のことを見切れ職人とあだなしていた。

 中学にあがったら、からかわれるようになった。ドラマでも映画でも、見切れているとはいえスタッフロールに名前が載るし。

 いやだったが、やり過ごそうとした。一人称を俺にして、強がってみたり。自分はクラス内でちょっと上位のグループにはいっていたらしく、よく遊びに誘われたが、会話についていけなくてぼーっとする時間でしかなかった。

 高校にあがって、いじめられるようになった。せりふ(挨拶じゃないやつ)がある役(ただしきちんとした端役だ)をもらったのだが、キスシーンがあったのだ。それで、色々といやがらせをされて、登校しなくなった。

 買ったままになっていた漫画や本を読んで過ごした。お昼は両親が居ないから、料理に凝った。


 その年の暮れに、父の実家へ帰省したら、キスシーンのことでからかわれた。父の()()()だか()()()だかのおじさんに。おじさんは、可愛い子とキスしてギャラが出て羨ましい、みたいなことをいっていた。

 そういう理由で色々されたのかもなー、と納得した。おじさんは酔ってくだをまいていて、金がない金がないと嘆いた。

 おじさんてなにしてるひと?

 トレジャーハンター。

 かわったひとだけど面白かった。なんとか山に絶対埋蔵金があるんだと云い張っていて、金があれば掘れるから出資してくれと頼まれた。おじさんは、トレジャーをハントするために、大工さんをして貯金しているらしい。

 お金を貸す約束をして家に帰った。おじさんとは話ができたから、結局高校は合わないんだなと思って高校は辞めた。子役も、ケーキは沢山食べたし、辞めた。


 酔いの覚めたおじさんから電話で謝られたけど、お金は貸した。おじさんは埋蔵金じゃなくて温泉を掘り当てた。なんか外しちゃうのは家系なのかねえ。


 ✕


 馬車が揺れて我に返った。

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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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