表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1092/6868

神聖公国にて 3

 

 野苺は、結局ふたりのおなかに収まった。また別のとこをさがしゃいいさと云うミューを、ジーナはくすくすして叩いた。

 邸に辿りつく。ここで寝起きしているのは、ミューとジーナだけだ。勿論めしつかい達は別として。

 それも、ミューの要望ではある。ジーナからあの母親や父親を引き離しておくには、ふたりがいいとごねるしかなかった。

 薔薇の咲く前庭を、ジーナが前になったり、ミューが前になったりして歩く。チェルノーラ下邸は、灰茶の石でつくられた、横に横に伸びた建物だ。高さはあまりない。丘に建っているから一部が高く見えるが、ほとんどが二階までしかなく、三階はふた部屋か三部屋あるだけだ。

「ミュー、はやく」

「解ったよ、袖をもぎとろうとしないでくれ」

「今日はとても巧くいったの」

「今日も、だろ。君が料理を失敗したところは、俺は見たことがない」

「見せていないだけよ」ジーナは小首を傾げる。「そんなことも解らないのね」

「ああ、俺は頭が鈍いんだ。サキみたいに賢いほうがよかった?」

 ジーナは顔を強張らせた。つい三日前、サキからの手紙が届いたので、サキの名前を出したのだが、なにか拙かったろうか。

「どうしてサキと比べるの」

「別に……深い意味はないさ。サキから手紙が届いたばかりだろう?それで」

 ミューはにこっとする。「リオと漸くと会えたって、嬉しそうだったじゃないか」

「そうね。とっても嬉しそう……やっぱり、あのふたり、いいかわしているのじゃないかしら」

 ジーナが目を逸らした。ミューは笑う。「おいおい、君こそどうしたんだ。まるで女の子だぜ、美貌の少年の許嫁が誰かを気にするなんて?」

「……あなたって鈍いわ」ジーナは軽く息を吐いたが、すぐにやわらかく微笑んだ。「でも、そう云うところが好きよ」

「俺は君の訳の解らないところが嫌いだよ。でもその百倍くらい、君の訳の解らないところが好きなんだ。変だろ」

 ジーナの髪を掬う。まっすぐで、つやつやしている。

 いやな気配がして、邸の玄関を見た。ジーナもだ。そこには、ジーナのおそるべき母親が立っていて、満足げににんまりしていた。


「まあ、まあ、ごめんなさいねえ、今日はどうしても、可愛いジーナの顔をしっかり見ておきたかったから……本当にごめんなさい、歳をとると間が悪くなってしまって」

「お母さま。ごきげんよう」

 ジーナは流れるように優雅なお辞儀をする。ミューも軽く会釈した。ファバーシウスのほうが家格は圧倒的に上だ。きちんとした礼をする必要はない。個人的にも、ジーナの母親を敬う気は起こらないので、丁度いい。

「新しいドレスを届けに来たついでに、お前の顔を見たかっただけなのよ」

 ジーナの母親はゆったり歩いてくる。侍女達が走り出てきて、馬車の準備を始めた。ジーナは母親を見ているが、目に感情はない。

「お母さま、お菓子を焼いたところです。お茶に」

「いいえ、これ以上お前とファバーシウス卿の邪魔をする母ではありません。ふたりでのお喋りもあるでしょう。内証のね」

 ジーナの母親はミューに丁寧なお辞儀をして、馬車へのりこむ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ