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ダストくんが戻ってきた。なぜか頭を抱えてしまう。
「ダストくんごめんねー」
涙と鼻水はなんとかしたし、当座しのぎに収納空間から取り出したクッキーをぽりぽり中である。クッキー旨い。あ、終わっちゃった。
まだある。からの袋を戻し、中身の詰まった袋を取り出す。クッキー大好き。咽がかわいたから水も飲もうかな?
「……ハーおじさんは?」
「ばしゃ、もってくるって。そしたら別のお店でごはんのつづきだよー」
「……肥えるぞ」
笑い飛ばした。ダストくんはため息を吐く。
お店のなかからけたたましい音がした。びくつく。
ダストくんが一瞬そちらを見た。「あー、まだやってんだわ。シアイルのやつらも参戦してた」
「ええ?」
はっとした。クッキーの袋を仕舞う。ダストくんがうんざりしたふうに云う。
「その心配かよ」
それ以外になにを心配しろと?
鎧をがちゃつかせて、警邏隊がやってきた。先導しているのはウェイターさんだ。警邏隊を呼びに行っていたらしい。
「あそこです、お客さん達が喧嘩を」
「君は下がってなさい。行くぞ!」
警邏隊が五人、店内へなだれ込んだ。怒号が飛び交う。火花が戸口から噴き出した。
飛び退る。ダストくんが盾になるみたいに前へ立ってくれた。
きょろきょろする。泣いていて周りが見えていなかったが、野次馬が居た。相当。
「マオ、ダスト坊、おいで」
ハーバラムさんだ。御者台に乗っている。「乗りな」
指示に従った。ダストくんは、トゥアフェーノを落ち着かせる、と御者台へ行った。
馬車が走り出す。がたごとと揺られた。水を取り出して飲む。泣いたら眠くたってきた。お腹空いたよう。
うつらうつらしていると次のお店に着いた。
大通りの北、だいぶ行ったところにある、小さくって古い食堂だ。お客はあまりいなくて、おばあさんと女の子がきりまわしていた。
定食ひとつしかないそうなのでそれを注文すると、重曹でふくらませたパン、根菜と羊肉のスープ、ドライフルーツとナッツのはいったクッキーが出てきた。味は文句なくおいしい。
半分くらい食べると落ち着いた。お餅は残念だったが仕方ない。屋内であんな魔法ぶっ放すやつが悪いのだ。
そういえば、この世界に来てから初めて泣いたかも。
泣いた理由がご飯を邪魔されたからかあ。凄く自分らしい。食欲に忠実に生きているからな。自慢にならねえ。




