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お餅がっ! 俺のお餅がっ!
地べたに這いつくばり、お皿を抱えて、人目もはばからず泣いた。お餅が! 食糧が無駄になったのだ! 泣かずにいられるか!
発破(魔法)に驚いたせいでもある。それで泣きそうだったところにこの追い打ちだ。泣いたってしょうがないよね!? おもちいいいいいい!
「おれの……おもち……!」
地面へ倒れ伏した。お餅が。お餅が無駄に。
ダストくんがおろおろと膝をつく。「マオ、おい、泣くなよ」
「ダストくんは!」がばっと上体を起こす。「これ見て哀しくないの!」
ほら! とお皿をつきだした。ダストくんのみぞおちにヒットした。ごめん。
ダストくんはうぐっと呻く、
「か、哀しいというか、まあ。でも、怪我するよりは」
「したよ! みみがびりびりするもん! それにおもちをむだにされたらこころのきずだよ!」
「だ、大丈夫かお前?」
「だいじょうぶじゃないよおおおおおうわあああああああんおもちいいいいいいいい」
第二波が来た。とめどなく涙があふれる。俺はまだ満腹じゃないのだ!
ぐすぐすと洟をすする。「まだたべたかったよおおおおお」
「お……お前ほんと……」
なにか云おうとしたらしいがダストくんは言葉をのみこんだ。口をもぞもぞ動かしている。
ハーバラムさんがひょいと屈みこんで、手巾をさしだしてくれた。
「顔がどろどろだよ。ほら、拭きな」
「しゅ。すみましぇん」
手巾をもらった。お皿は膝の上に置いて、手巾で顔を拭う。お餅の残骸が目にはいり、またしても涙がこみあげる。
「おも、おもちっ、あとひとくちだったのにぃ」
「この量を一口でいこうとしてたのかよ」
ハーバラムさんがダストくんの頭をはたいた。ノールックで。
手巾を握りしめる。
「すっごくおっきいおとがしたし……こわかったよおお」
「あれは酷いよねえ。ダスト坊このお皿返してきな」
「えっ」
「いいから」
はい、と、ダストくんが膝の上からお皿をさらっていった。「おもち!」
「マオ、あれはもう食べられないからね。なにか別のものたべよう?」
べつのもの?
涙が引っ込んだ。「はいたべます」
こくこく頷く。食べたい。まだなにか食べたい。
お餅ひとくちくらいで泣いて、みっともなかったな。勿体ないけれど俺のせいじゃないし(魔法つかったやつは許さん)、ここはお腹がいっぱいになるまで食べて気を落ち着けよう。
とにかく食べりゃ溜飲もさがるというものだ!




