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お昼は、レントの東門に程近いお店で食べた。
レントは裾野だが、各国からひとが集まる。なので、料理は色んな地方のものがごちゃまぜ。
隣のテーブルではかっちりした軍服っぽいものを着たひと達が酒盛りをしているし、頭に角があって真っ白い服の集団がひたすらサラダだけをかっくらっていたり、簡素なシャツ(例の、ぼたんでなく紐で留めているやつ)とずぼんの男たちがとうもろこしとお肉をがつがつ食べていたりした。
しかも、どうやらそれぞれシアイル、ディファーズ、ロアの出身らしく、時折無言の睨み合いが起こる。空気は悪いことこの上ない。
丸テーブルへ組んだ腕をのせ、ハーバラムさんはため息を吐く。
「ごめんね」低声だ。「時期を忘れてた。いつもはもっと和やかなんだけど、試験のことでみんなぴりぴりしてる」
身を乗り出した。こそこそ云う。「試験の時期ってこんな感じなんですか」
「どこも、自分のとこから入山者を出したいんだよ」
「ばかばかしいよな」
ダストくんはお餅を食べながらもごもごと喋る。「御山に何人自国の人間を送り込んだって無駄なのに」
ああはい。そういうことか。
戦っても勝てないなら、自国の人間だらけにして、実質掌握してしまうつもりなのだろう。
ダストくんは小さく頭を振る。御山に居たことのあるダストくんには、そういう思惑は下らなく見えるらしい。
この感じが御山でも続いてるとしたら、いやだなあ。御山へはいって、もとの世界へ戻る方法をさがしたいんだけど……これにさらされるのかあ。
まっ、はいれるとは限らないんですけどね。今から御山へ行った時のこと心配しても無駄か。
お餅おいしいし、アーモンドいりのトマトシチューもおいしい。レーズンはいってるじゃん、うまあ。
むし野菜は出色だな。こっちの世界で初めてじゃがいも食べたかも。ねっとりして味が濃くておいしい。色も黄色っぽいし、もとの世界のとは違う品種かなあ?
と、食事を満喫しているものの。
なんか、どんどん空気が重くなってる。やばい感じ。
案の定だった。
きっかけは、左右のこめかみに下向きの角が生えてるひと。そのひとがウェイターさんを呼んで、すぐ隣のテーブルを指差したのだ。「あの者たちの席をかえろ。鼻が曲がりそうだ」




