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店員さんに頼んで、お薬のレシピが載った本も見繕ってもらった。
最近出版されたものならこれですねと、真新しい皮装丁の本を五冊持って来てくれる。こちらは古書ではないので良心的なお値段だった。合わせて銀貨26枚。ドールさんへのお土産に、ダストくんに持って帰ってもらおう。
となると、ナジさんにもお世話になったし、シアナンさんやリーリさんバドさんにもよくしてもらったし、ルルさんやヤームさん、ラトさんにもお土産が要るかなあ?
あとでダストくんに訊こう。どういうものがいいか。
ハーバラムさんが満面の笑みでやってきた。「まーお、終わったよ。お昼食べよう」
「はい!」
店員さんに会釈して、ハーバラムさんと外へ出た。ダストくんと馬車の姿がない。
「ダスト坊に席とってもらってるんだよ。人気の店だからね」
ハーバラムさんはにんまりした。「それにダスト坊を本に近付けると大変だからさ。あの子何時間でも読むんだよ」
ダストくん、本の虫だったのか。仲間。
道すがら、ハーバラムさんへ訊いてみた。
「ダストくんに、村のひと達宛てで、お世話になったお礼で、なにかお土産を持って帰ってもらおうと思ってるんです」
「あら。マオはいい子だねえ」
「へへ。それで、どういうものがいいのかわからないので、……あ、ドールさんにはもう買いました。お薬のつくりかたの本。新しいやつです」
それはいいねと誉めてもらえた。にやにやしてしまう。
村ではなかなか手にはいらない塩や、砂糖がいいのでは、と助言をもらった。
「しおって、ないんですか?」
「んー、ディファーズかシアイルからのものに頼ってるから、荒れ地へ近付くほど価格は高いよ。レントなら、ちょっとだけど安い。荒れ地でもとれないことはないんだけど……」
ハーバラムさんは困ったような顔をする。
「何故か解らないけど、岩みたいにかたくて大きな塩の塊が見付かることがたまにあってね。普通の塩よりおいしいらしくて、荒れ地でとれるのに荒れ地の人間の口にははいらないんだよ」
へー。岩塩だろうな。
ハーバラムさんは不思議そうに小首を傾げる。「荒れ地の向こうに海があるんだって、昔の偉いひとは云ってたらしいけど……海でそんなふうに塩の塊がとれたりはしないだろ? 変だよねえ。ナジやシアナンは、還元で出来たんじゃないかって」
荒れ地の向こうに海かあ。ほんとにあるんだろうか?




