平成カウントダウン
今日のお母さんは様子がおかしい。
朝からせわしなく家中を掃除していたかと思えば、キッチンで鼻歌を歌いながら料理をし始めた。しばらくすると、今度は折り紙で輪っかを繋いで何かを作っていた。
私はお母さんに近づき、浮き足立っている理由を聞いた。
「明日から元号が変わるでしょ~。 だから、平成最後の日をお祝いしたくて~」
私はそれを聞いて、アホなのかと思った。たったそれだけのことで、一人はしゃいでいるお母さんに呆れてしまった。しかしよくよく考えれば、何かイベントがある度にこの人を中心に騒いでいるんだよな。
私の冷めた視線を気に止めず、お母さんは輪っかを繋げたものをせっせと作っていた。
もうお母さんの好きにさせようと思い、ソファに寝転がった。しばらくすると、睡魔が襲ってきた。私は本能に従い、そのまま昼寝する事にした。
ふと、頭を撫でられる感覚がしたので、目を開ける。いつの間に帰ってきていたのか、成美ちゃんが私の横に座っていた。いい歳をした大人が、頭を撫でられるというのも恥ずかしいもので、起きあがって成美ちゃんの手から離れた。
成美ちゃんが残念そうな顔をしてこちらを見ているが、私の知った事ではない。彼女に撫でられるのは嫌いではないが、一応の羞恥心はあるのだ。
いつの間にかリビングが飾り付けされていて、ちょっとしたパーティー仕様になっていた。
お母さんはまたキッチンに入り、料理を再開していた。
しばらくリビングをうろうろしていると、令次君とお父さんが部屋に入ってきた。
令次君は部活帰り、お父さんは仕事帰りだからか、疲れた顔をしていた。それでも少し嬉しそうな顔をしているのは、ときどき耳にするゴールデンウィークというものが楽しみだからだろうか。
そのあたりのことは私にはよくわからないが、笑っていることは良いことなので、何も言わず見つめていた。
「ご飯ができたわよ~」
お母さんの声に、皆が食卓についた。
お昼頃から張り切っていたからか、今日の夕食は豪勢だった。
(こういうことなら、はしゃいでいる姿を見るのもたまにはいいか)
頭の片隅でそんなことを考えながら、黙々と食べる。
テレビでは、平成はどうだったとか令和はこうなるとかを語っていた。日付が一つ変わるだけであーだこーだ言っているのは不思議なものだと思った。
だって――
「美味しい? ミーちゃん」
「ニャー」
猫である私にとって、今日も明日も何も変わらない日常があるだけだから。
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