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平成カウントダウン

作者: 黒霧 永夜
掲載日:2019/04/30

 今日のお母さんは様子がおかしい。

 朝からせわしなく家中を掃除していたかと思えば、キッチンで鼻歌を歌いながら料理をし始めた。しばらくすると、今度は折り紙で輪っかを繋いで何かを作っていた。


 私はお母さんに近づき、浮き足立っている理由を聞いた。


「明日から元号が変わるでしょ~。 だから、平成最後の日をお祝いしたくて~」


 私はそれを聞いて、アホなのかと思った。たったそれだけのことで、一人はしゃいでいるお母さんに呆れてしまった。しかしよくよく考えれば、何かイベントがある度にこの人を中心に騒いでいるんだよな。


 私の冷めた視線を気に止めず、お母さんは輪っかを繋げたものをせっせと作っていた。

 もうお母さんの好きにさせようと思い、ソファに寝転がった。しばらくすると、睡魔が襲ってきた。私は本能に従い、そのまま昼寝する事にした。


 ふと、頭を撫でられる感覚がしたので、目を開ける。いつの間に帰ってきていたのか、成美ちゃんが私の横に座っていた。いい歳をした大人が、頭を撫でられるというのも恥ずかしいもので、起きあがって成美ちゃんの手から離れた。


 成美ちゃんが残念そうな顔をしてこちらを見ているが、私の知った事ではない。彼女に撫でられるのは嫌いではないが、一応の羞恥心はあるのだ。


 いつの間にかリビングが飾り付けされていて、ちょっとしたパーティー仕様になっていた。

 お母さんはまたキッチンに入り、料理を再開していた。


 しばらくリビングをうろうろしていると、令次君とお父さんが部屋に入ってきた。

 令次君は部活帰り、お父さんは仕事帰りだからか、疲れた顔をしていた。それでも少し嬉しそうな顔をしているのは、ときどき耳にするゴールデンウィークというものが楽しみだからだろうか。

 そのあたりのことは私にはよくわからないが、笑っていることは良いことなので、何も言わず見つめていた。


「ご飯ができたわよ~」


 お母さんの声に、皆が食卓についた。

 お昼頃から張り切っていたからか、今日の夕食は豪勢だった。


(こういうことなら、はしゃいでいる姿を見るのもたまにはいいか)


 頭の片隅でそんなことを考えながら、黙々と食べる。

 テレビでは、平成はどうだったとか令和はこうなるとかを語っていた。日付が一つ変わるだけであーだこーだ言っているのは不思議なものだと思った。

 だって――


「美味しい? ミーちゃん」

「ニャー」


 猫である私にとって、今日も明日も何も変わらない日常があるだけだから。


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