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ビッチと作る青春物語  作者: 白詰草
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初授業



四月の、まだ肌寒さが残る通りを歩いていた。


今日は高校生活二日目、いよいよ高校の授業が始まって行く日でもあり、少しだけ不安に思ってしまう。


そうこうして行くうちに、学園が見えてきた。

俺が通う滝布学園は何十年の歴史を持つ学園で、今から二年前に校舎を新しくしたらしい。県有数の図書室や、トレーニングルームが用意されていて、防音室なんかもあるらしかった。校舎自体も大きく、塗られたばかりの塗装が白く輝いている。




俺が教室に入った時には、ほとんどの生徒が中にいて、ざわざわとした喧騒に包まれていた。

俺は、生徒たちの間を抜けながら自分の席を目指した。どうやら、周防のやつはまだきていないようだ。


「おはよう」

「おっはよー」


席に座る時に、隣で荷物の整理をしていた綾川に挨拶をする。すると、笑顔で挨拶を返してくれた。

こんな子と隣の席になれるだなんて、俺はもう、一生分の運を使い果たしたんじゃないだろうか?


だが、それだけでは終わらず、綾川の方から話しかけてきた。


「私、綾川凛華。これから一年間よろしくねっ」

「俺は深海翔駒、こちらこそよろしく。」

「私さ、入学式で遅刻しちゃったし、昨日友達を作る暇なかったんだよね。だから緊張しちゃう。」

「綾川ならすぐに友達できるって。でも入学式に遅刻してきたのにはマジで驚いたわ。」

「寝坊しちゃって、大慌てで準備したんだよー。本当に焦った。」


そう言って、困ったように笑う。

綾川は美人で、そんな表情さえ、素直に可愛いと思った。


綾川と話していると、ようやく周防が教室に入ってきた。時計を見ると、すでに時刻は8時28分。もうすぐ朝の読書の時間が始ってしまう。


俺が読む本は、ザ・オタクって感じのライトノベルだ。本当はもっと読みたい、真面目な感じの本もあったのだが、結局この本を選んだ。オタクの友達を作れればいいなと思ったからだ。



「あっ…その本って」


「ん?どうした綾川」

「…いや、最近よく見る本だなって。」



少し不自然な感じもしたが、気のせいだろう。この本はハーレムやチート満載の、いかにも彼女が読みそうにない本だ。


誤解しないで欲しいのは、俺は決してこういう本が嫌いなわけではない。可愛ければチョロインだって許すし、チートで最強になる展開も全然ありだ。

ただ、少し作られすぎているっていう感じがしてあまり好きではないのだが。


もっとも、綾川と隣の席になったあたり、これからは御都合主義をバカにできないのかもしれないな。

そう思いながら、俺は本を読み進めていった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





朝の読書、細田先生によるSHRが終わり、次はいよいよ一発目の授業になった。よりによって一時間目は俺の大嫌いな国語である。


そう、俺はマジで国語が苦手だ。

本を読むことは大好きで、中学校の図書室の本をほとんど読み尽くしたくらいだ。

だけど、それがテストになると全く手も足も出なくなる。


中学校でさえ古典と現文どちらも壊滅的で、なんとか漢字や漢文の暗記で赤点を免れていたと言えば、どれだけ酷いかが伝わるだろうか?



とにかく、できるだけボロを出さないようにしなければいけない。予習もしたし、授業くらいなら乗り切れるはずだ。


俺の大好きなバンド、『one hour』の曲の中に、こんな歌詞がある。


You do can most things if you believe yourself

自分を信じれば、大抵のことはできんだよ。



このバンドは十何年も前のバンドで、今はもう一部の人間しか知っている人はいない。だけど、彼らや、彼らの曲には熱意や信念が感じられて俺は大好きなんだ。



教室に先生が入ってきた。教卓の前に立つ。

大丈夫、教科書はめちゃくちゃ読み込んだ。あとは、自分を信じるだけだっ…。


「起立、礼、着席。」

「「「「おねがいします。」」」」

「現国の染田です。今日は簡単な小テストをして、皆さんのできないところをチェックしたいと思います。」



オワタ。





「起立、礼、ありがとうございました。」

「「「「ありがとうございました。」」」」


国語のテストは、あいからわずひどい出来だった。

しかも、先生が「〇〇点以下は座ってください。」なんて風にいうから、大恥をかいてしまった。


やはり、自分を信じても国語だけはできないみたいだ。


「おいおい深海、国語が32点だったとしても落ち込むなよ(笑)」

「ま じ でふざけんなこら」


周防のやつ、自分のテストの点数だってクラスの最下位に近い52点のくせに完全に調子に乗ってやがる。


「周防、そんな風に言ったらダメだよ。」


そんな風に笑う綾川は、なんと100点をとっていた。

本人曰く偶々らしいが、俺ならどんなラッキーパンチが出ても七十点を越さないだろう。


「お前がもし俺にテストの点数で勝てたらジュース奢ってやってもいいぜ?そんな日が来たらなぁ!」

「うっざ、こいつマジでうっざ。」


だが、そこで少し考える。今日はあと6コマ授業が詰まっていて、その内英語と数学で小テストがあるらしい。


「なぁ周防。俺が勝ったらマジでジュース奢れよ。」

「お、おう、いいぜ。」

「言ったな?」


かかった。今日の昼飯にコーラが追加された瞬間だった。


「周防、フェアじゃねえから、一応教えとくぜ?」

「なんだよ。」




「俺、入学試験の時、数学で三位、英語九十点台だったから。」



「……ハアッ!?」


休み時間が終わったらしい。数学の先生が入ってきた。だが、授業が始まっても周防が後ろから手紙を送りつけてくる。

いい加減鬱陶しいので、振り向いてやる。


「周防、」


「俺、コーラがいい!」

「◯ね!」


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