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ビッチと作る青春物語  作者: 白詰草
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綾川 凛花


「なあ、周防、俺は今夢でも見ているのか?」

「もしそれが悪夢なら、俺も同じ夢を見ているよ。」


周防が何かおかしなことを口走っているが、俺はその言葉に構う余裕なんてなかった。なぜならば、今まさに、保育園の天使(仮)が先生に怒られている最中なのだから。


彼女は、三日前に見た時と何も変わらないままでいて、しかしこの学園の制服をバッチリと着こなしている。

彼女が教室に入って来た途端、クラスの男子のほとんどが沸き立ったといえば伝わるだろうか、今日から彼女と同じクラスになれるということでこの教室中には、一気に浮き足立った雰囲気が流れ出した。


その反面、一部の生徒は至極微妙そうな顔をしているのが印象的だったが。



そんなことを考えているうちに、彼女に対するお叱りも終わったらしい。彼女は周りに笑顔を振りまきながら俺たちの方に向かって来た。


「よろしくっ」

「おう。よろしく。」


彼女は席に座る一瞬、はにかみながらも俺に挨拶してくれた。少し上目遣いになっているところや、急いで来たのか上気している頬も最高だ。

クールぶってはいるが、内心かなりドキッとしてしまった。


細田先生は苦笑いをしていたが、気を取り直して進めるようだ、一度時計を確認すると口を開いた。


「よし、それじゃあ全員が揃ったところだし自己紹介と委員会を決めます。じゃあまず自己紹介、一番から!」


「は、はい!」

ガ、ガタン!


教室中に、椅子の倒れる音が響き渡る。どうやら一番の人が緊張しすぎて椅子を倒してしまったようだ。

椅子を倒してしまった本人は恥ずかしそうにしてあるが、さっきのはなかなかのファインプレーだと思う。

その証拠に、何人かの生徒は笑いだしていて、教室の空気はとてもいいものになっていた。


「お、俺は相生 裕太あいおい ゆうたです。丸岩中から来ました。部活はサッカー部に入るつもりです。一年間よろしくお願いします!」


そう言って彼の自己紹介は終わったらしい。相生はまだ恥ずかしいのか、顔を赤くしたままだったが、彼の尊い犠牲によってこれからの自己紹介は大分気楽にやっていけるだろう。

ほんと、彼はいい仕事をしてくれたものだ。


すると、いつのまにか俺の前の人の番になっていたらしい。前の席の人が立ち上がった。

程なくして彼の自己紹介も終わり、いよいよ俺の番となる。


「深海 翔駒です。県外から来ました。部活は何に入るのか全く決めていません。これからよろしくお願いします。」


そう言って席に着く。なんの特徴もない挨拶ではあったが、ここで変なことを言って悪目立ちするよりはマシだろう。

次は、周防の番だ。


「俺は、周防 芳樹です。西中から来ました。部活はバトミントン部に入る予定です。一年間よろしく!」


こんなふうに、大した山場もなく自己紹介は終わっていく。そして、男子の部が終わり女子の二番、つまり初日に大遅刻をかました綾川凛華の番になった。


「はいっ、綾川 凛華です。西中から来ました。部活は陸上部に入ります。これからよろしく!彼・氏・募・集・中・で・す・!」


どうやら、心配は杞憂だったらしい。みんなは他の人と変わらない扱いで彼女の自己紹介を受け入れたていた。後の自己紹介で特筆すべき人は、さっき周防が可愛いと騒いでいた子くらいかな?

綾川が来たことでクラスで一番とは行かなくなったけど、それでもすごい美人な子だ。


「紙霧 若菜かみきり わかなです。よろしく」


紙霧の自己紹介はこれだけだ。

立ち上がったかと思えばそれだけ言ってすぐに座ってしまった。どうやら、あまり人を寄せ付けたくないタイプの人間らしい。


他に大したことはなく自己紹介は終わり、次は委員会を決めることとなった。


ここで、いの一番に手を挙げたのは紙霧だった。


「では、学級委員に挑戦してみたいという人、手を挙げて下さーい」

「はい、私やりたいです。」


彼女の自己紹介はアレだったが、誰もやりたがらなかった学級委員を進んで引き受けてくれるので反対意見はなかった。むしろ男子の学級委員に立候補する男子が多くて争奪戦になったくらいだ。

ちなみに男子の学級委員は相生になりました。あの凄まじいジャンケン大会で着々と駒を進めていく様子は圧巻としか言いようがなかったぜ。


そして、俺は本が好きだったので図書委員。周防のやつはジャンケンで負けて学習委員。綾川さんは、厚生、掲示の委員会となった。

俺は元から図書委員会に入りたかったので問題なかったが、周防は本気で悔しがってる。


「よし、それでは今日はもう学校は終わりだ。明日から本格的な授業が始まるので、これから一年、頑張るように!」


「はい!」

「起立、礼、ありがとうございました!」


今日は入学式が終われば後の一日中は完全にやることが無くなる。あとはうちに帰るだけだった。


今日はいいスタートを切れたと思う。友達もできたし、何よりもあの女の子と隣の席になれた。


(まるで漫画みたいだな。)


この時の俺は、心底そう思っていた。

だが、すぐに俺は知ることになる。

やはり現実は現実で、漫画のように都合よくできていない事と


綾川 凛華という少女は、漫・画・な・ん・か・よ・り・遥・に・ぶ・っ・飛・ん・で・い・る・事・を・。



こうして俺の高校生活1日目は終わったのだった。




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