第一回 合格発表
三月十六日
県立東高校の
合格発表日。
僕こと山下慎一郎、幼馴染みの川野忠、それに若野美佐子の三人組は、受験番号票を持ち発表を待っていた。
忠は、苦手な英語がうまくいつてなかったようで、落ちたらどうしようの顔をしていた。美佐子は、
《大丈夫。三人で一生懸命勉強したから・・・。》
忠を励ましている。それでも忠は、詰襟の制服の胸に手を当てて心配の表示が募っていた。発表まであと一分。掲示板を持って来た。とても長い時間が流れた気がした。掲示板が立てられ、すぐに僕たち三人の番号が見かり、おめでとう。抱き合って喜びを表した。
不安もあるけど、今は合格の喜びが勝っていた。
忠は、「受かった!」の声をかけ中学時代の友人、真田孝浩君、和田浩太君も、
「忠と通えない高校生活なんて」なんて言いながら、合格の喜びを称えあった。
中学時代はやせていて、背も一番低かったから、引っ込み思案なところもあったけど、
「勇気と度胸、美佐子にかっこいいところを見せよう」との和田君の勧めで、柔道部に参加して体力をつけた。
柔道の本を買い込み、受け身をすぐに習得して、立技、寝技も覚えた。もちろん、筋力つけるトレーニングや走り込みも十分にしたと思う。
一通り覚えると、強くなりたいと欲が出る。
僕より背も体重もある和田君を練習試合で投げ飛ばすと、回りからすごいと歓声が上がってからは、度胸がついた。
そんな中、くじ引きで、生徒会副会長の立候補が決まった。
忠の応援演説が、あまりにも受けてしまったおかけで当選してしまった。
彼いわく、
《
みなさま、こんにちは。
》
は、ウケ狙いじやなかったのにななどと言っていた。
真田君に言わせれば、「あれは狙っていたよ。川野のやりそうな
ことだから」だと振り返る。それでも自信がついた僕には、よい経験につながった。
桜が咲き、花びらが舞い、ほのかな香りに包まれた入学式。憧れのブレザーの制服に袖を通した。
会場に入ると、僕に視線を集める生徒たちがいた。別の中学校の
出身者のようだった。身長が一番低かったから目だったのかな。
とても驚いているような表情が多かったような気がする。
検印なきものは無効です。
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