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呪文に力はありません

 なんて、なんて楽しいのだろうか。

 そう思いながら目の前で真っ白の本に付いて話し合ってるやつら視線を向ける。正直すぐにでも一緒に飲みたいからネタばらししたい。が、あーだーこだー言ってる姿は楽しいしもう少し待つとするか。

 そう考えながらこの日までの事を思い返す。



 事の発端は数日前。同じ(まじな)い師であるキリーに賭け事、まぁ勝負事を申し込まれた。

 勝負といっても(のろ)い合ったり、(まじな)いの精度を競い合うなんて真面目な事をするような私達ではない。


 悪戯だ。


 だまされた人間が多いほうが勝ち。期間は私が住んでる王都で開催される星屑祭の一日だ。

 それ以外のルールは、不正しない様にカウントするための魔法具を王宮勤めしている腐れ縁である魔術師ウェルに制作してもらう事。

 カウントはネタばらしをしたときに「だまされた」又は同義の言葉が出たときにカウントをする。

 あと、負けたほうは勝ったほうの言う事を一つ聞くくらいだ。


 なのでウェルにそういう趣旨の真法具を作れるか聞くと可能だと言われたので二人で金を用意した。

 勿論なんでこんな真法具を作るのか聞かれたがなんやかんやでかわして金を押し付けて後は星屑祭の前日までどんな悪戯にするか考えたり試作した。



 まず思いついたのは「凄い」と思われる物ではなく「だまされた」と思わせる物をやる事だ。いや、勿論凄いとも言われたいがそれじゃあ勝てないのだ。

 そして怒りがわいてくる物なんてのはダメだ。笑いながら「こりゃだまされた」なんて言わせるような物をつくるのがベストだ。

 金が発生するのも止めたほうがいいだろう。金が発生するとたいていの奴らは怒るだろうし、何より趣味じゃない。


 あーだーこーだ考えた結果私の一番得意な物、呪文を使った物を使用する事にした。

 どんな呪文にするかを決めよう。呪文を決めたら悪戯も勝手に思いつくだろう。

 そう思い本棚にある自分の特別なインクで書いた本、というより呪文表を取り出し真っ白のページに適当に「眠い」といった。

 そして文字が浮かぶ様を見て小さく「あ」と声を漏らした。



 そこからは多分早かった。インクを購入してきて、本を制作するのに必要な物を購入し、徹夜をしながら薬で体力を回復させたりしてなんやかんやで星屑最前日には用意ができた。

 前日になぜかキリーと飲んだので私がひとまず徹夜したりしながらなんとかでき上がった事を報告したら「しょうもない勝負に全力をかけるお前だから好きなんだ!」と異国の酒を注いでくれたりしたがそれに対して私は大真面目な顔をして。

「別に私は勝負事だからと真面目にこんな事をする訳では無い。真面目にバカしたいからだ!」

 と、宣言したら「俺も同じだ!」とやっぱり真面目な顔で返されたので互いに顔合わせて笑い合ったのを覚えている。

 勿論本気で入っていない。



 そんな事をしていたら早くも星屑祭の日になっていた。


 朝早くにキリーと「クッソ頭いてぇな」とか「私、酒飲みながら相手するわ」とか「それ天才だな」とかいかにもバカみたいな事を言い合いながら、ウェルのいる王宮へと向かい、真法具を貰うついでに朝ご飯もおまけしてくれた。


「おい、ウェル。お茶くれ」

「あ、私も」

「……お前ら」


 いかにも「俺を召使い代わりにするとかお前ら正気か?」見たいな、ひとまず何か言いたげなのを無視して黙々と出してくれた飯を食いながら、これ絶対酒に合うなとか考えながらキリーの持ってきた荷物をちらりと見る。

 でかい。いや、私の荷物もそれなりの大きさはあるが何か比にならないくらいでかい。一体どんな事をするのだろうとか考えながらウェルが入れてくれたお茶に対して礼を言う。


「ウェル、部屋掃除しとけよあれっやから」

「俺も、昨日結構飲んだけどまだ、余ってる別の国の酒もってくるからな~」

「まじで? アレ辛口で結構美味しかったから嬉しいわ」

「甘いのもあるんだけどそれは俺が飲むわ」

「……ったく。お前ら何本開けたんだ。そして、ピビお前は何本昼間から何本開けるつもりなんだ!」


 そういいながら私のだますための物が入った袋ではなくの酒瓶の入ったほうを奪ってくる。


「ちょっと、祭りでくらいいいじゃん」

「限度を考えろ、限度を!」

「そんな怒ってると若白髪か若はげになるぞー」

「だれが禿げるか!」


 そんな風に楽しくわいわいと食事しながら話した後魔法具の説明を受けた。

 ただカウントするだけの真法具なのでそこまでの説明は存在しない。


 ひとまず、短い説明を珍しく真面目に聞いた後キリーとウェルとわかれた。なにやらキリーはあそこでやる事があるらしい。


 星屑祭でにぎわっている街を少しゆっくりと進みながら今は店を出す奴らが準備している最中だから人が少し少ない事を嬉しく思う。

 王都でやる大きなお祭りなんて星屑サイト建国記念日と王様だとか王族の誕生日くらいだし、そんなかでも一番明るいお祭りがこれしかないから一番人が多くて一番楽しくて一番面倒くさい祭りと言われてる。


 まぁそんな中、噴水広場に小さな露店を設置する。そこでおおきな真っ白い本を一冊立てかけ、他にも適当に家の中にあるいらなくなった魔法参考書などを脇に並べる。

 それと、呪いとかがかかったアクセサリーだとかを設置してあとは、日除けを作って本格的に人が多くなるのを待った。


 私が考えたのは本を開いたら真っ白で何も書いてないと言われた時、またはそういった表情を浮かべたときに「○○な人にはこの本が見えない(まじな)いがかかっている」などと嘘を言う。

 するとまぁ相手は焦るだろう。つまり相手が焦るようなことを言うのだそれで連れなんかがいたら「お前みえるか?」何てやってるのをいてから「まぁ嘘だけど」とか

いうのだ。

 すると「何だよ、だまされたじゃねえか」とか言うだろう。その時点で私カウントが入る。


 でもさすがに真っ白なだけなのは呪い師として少々思う所がある。という事で先ほどの本と同じ特殊なインクの出番だ。

 呪文を少々変えてインクに唱えたら、インクが見える様になる方法なんてのは変えられる。先ほどみたいに声をかけるのもいいだろうが先ほどのは少し特殊だ。

 言葉や単語ではなく、私の声に反応してインクの色が出現するのだ。つまり私でないと色が出ない。個人的に中身は星屑祭に関し手を童話風にまとめた物でも書こうかと思っていたのでそこまでガチガチに隠すような呪文がかかってるインクで書くのは何か嫌だと思いリズムを決めた。


 そこまで考えてる内に昼と朝の間の時間になり始めているから子供が既に来ている事に気がつく。もしかしたら子供のほうが簡単かもなーとか考えていると、ひょっこりと本とかを置いた台から顔が見える。

 七歳ぐらいだろうか。元々人の年齢を当てるのが得意でない上にあまり関わる事の無い少女と着たいまいち年齢が分からない。


「いらっしゃい。何か気になる物でもある?」

「えっとね……その本! 何で真っ白なの?」


 小さくてもお客だと思いそう声をかけると早速本に付いて興味を示してくれた。よしきた。


「あぁ、この本はねぇとあるお話が書かれてるの」

「お話? よみたい! よみたい!」

「あぁ、どうぞ」


 そういって本を渡すときらきらとした顔でその本の表紙を開くと頭に疑問符でも浮かんでそうな顔に成る。なにかをいうまえにここですかさず私は話す。


「この本はね。呪文をかけてあるの」

「じゅもん?」

「そう呪文。確かその本は~………嘘を付いた事がある人は読めない呪文がかかってるの!」

「え!?」

「ん?どうかした?」


 つまりこの子は嘘を付いた事に思い当たることがあるのだろう。さぁどうしよか。と考えたがここはすぐにばらしたほうがいいだろう。そう考えてバカみたいに本を前に焦ってる女の子に向かって言う。


「な~んてね」

「え?」

「この本の表紙を三回ノックしてみて」

「の、ノック?」

「そう。こんこんこんって」


 そういうと少し不安そうになりながらこんこんこんと言う音を響かせタラおそるおそるという風に本を開いた。すると。


「うわ!うわぁ……お姉さん!お姉さん!これどうなってるのすごいすごい!」


 そういってその本に文字が現れた事にえらく感動している少女に住まない呪い師としては珍しい事に私は感覚派らしいから仕組みがよくわかってないんだよなどと言える訳も無く、弟子入りしてくれたら教えるかもねなんていってこっそりカウンターを見た。

 そこにちゃんと一と表示されていた。ひとまずは一人目だませたらしい。「これどうなってるの」でカウントされたのだろうか。真面目に説明を聞いてたはずなのに、いまいちカウントの原理は分からんがあまり気にせずやろう。

 勝負する事が目的じゃないのだから。



 そんな風にして子供とか大人とか色んな人に悪戯というかあぁひとまずだます事をしたり普通に商品を買ってくれる人もいたりで、中にはお話を即興で作っちゃうなんて人もいてなかなかに楽しめた。

 カウンターは102と表示しているのを見てそろそろ終わってもいい頃合いかなと空を見て思う。茜色になっている空は夕刻になっているということだ。

 夜にはウェルの所に戻ろうとしていたのでもう十分に楽しんだからと思い店をたたみ、ウェルの所に向かった。



 王宮内はそろそろ始まる花火を一目見ようとでもしているのかほとんどの奴らが西館の方に行っていて東館にあるウェルの所まではすごい静かだ。

 こんなに警備にの人がいないのはいいのだろうかと考えながらウェルのところまで一直線に向かうとそこには見知らぬ人がいた。

 遠くなのでシルエットしか見えないがシルエットは女だ。ドレスを着ている。ウェルが女をわざわざ自分から呼ぶタイプには思えないし、キリーも呼ぶタイプじゃないだろう。

 まぁ、どうでもいいかと思い、扉の前にいる人に向かって声をかける。


「どうかされたのですか?」


 そう声をかけると明らかに一瞬焦った感じだったがすぐにそれを隠すような感じになる。隠すというか逆に嬉しそうというか。


「もしそこに用があるのでしたら私も、用がありますのでご一緒にいかがでしょうか」


 そう言い少し近づきちらっと顔を見る。


「……ん?」


 そこにあった顔は明らかにキリーの顔だ。キリーは女兄弟いただろうか? いや思い出せない。美人なはずなのにキリーの顔というだけで全く美人に見えなくなってしまう。何というかまるで女装したみたいな……。


「女装!?」

「何だ分かってたのかよ~つまんねーの」

「いやわかるはず無いだろ! お前さっきまで普通に女だと思ってたぞ!」

「マジか」

「顔見た瞬間気づいたけど」

「うわ~そんなにわかる?」


 扉の前でそういうふうにごちゃごちゃ話しているとバンと扉が開いて、鬼のような顔のウェルが「早く入れ」と静かにいった。



 先ほどいった通り花火は東館からは見れない。じゃあ私達はなぜここに集まったかと問われれば東館から見える湖に映る花火を見るためが目的の二割。八割は酒飲んで語りたいだけだ。


「一年ぶりですなー」

「だなー」

「なに当たり前のことを言ってるんだ」

「ウェルは当たり前の事を素晴らしく思えないのかー。かわいそーに」

「……お前は素晴らしいと思ってるのか」

「そりゃね」


 そんな事を言いながら三人でベランダというかバルコニーというか出っ張った所に座ってそれぞれがグラスやら瓶やらをもつ。


「じゃあ、一年ぶりに集まった事に対して?」

「あったの一年ぶりじゃないしなー」

「普通に星屑祭に対してとかでいいだろ」

「えぇ……つまんないじゃん」


 そういった瞬間ウェルが面倒くさい奴を相手にしてる時の顔に成っているのに気づいた。


「何で、面倒くさそうな顔に成ってるの!」

「事実だからな」

「えー」

「でも、確かに星屑祭に対してじゃつまんねぇしなぁ」

「だよね! 何かいい案無いかなー」


 そう二人でうーんと首を傾げて、ウェル一人がそこはどうでもいいとでも言いたげな表情でいるとキリーのほうが何か思い付いた顔に成ってこっちに向かってこういった。


「さっき勝負したんだし、かったほうをたたえて乾杯するか」

「ナイスアイディア。私、102」

「うわ、87」

「よし、私の勝利に祝してかんパーイ!」

「かんぱーい!」

「ぱーい」


 そう挨拶をして私はラッパ飲みキリーはグラスの中身を一気飲み。ウェルは一口だけ口に含んだ。


「キリーはその……女装?」

「おう。お前は?」

「これー」


 そういって102人をだました悪しき白の本を取り出す。心の中でもなかなかに恥ずかしいことを言ってる自分に対して、少し頬をつねりたくなるがそんな事したらウェルやキリーに冷たい目で見られる事待った無しだろう。

 そうしょうもない事を内心考えて本をキリーが受け取ったのを確認したら開けてない酒を開けてまた一気のみした。


「本……なのか?」

「真っ白だな。呪いの感じはするが本自体にって感じじゃねぇ」

「触った感じは特に以上がないな」

「なら、臭いはするか?」

「……焼き鳥の臭いがする」

「……そうか。じゃあ、キリー呪い解除できるか?」

「あー……ちょっと待ってくれ。ピビがやっただけある」

「ちょっとお前ら、そんな正規法の道を通らずにチートの道へ走る何てつまんない事をするのか?」


 さすがに呪い解除しようぜという流れになったら私だって呪い師として少し苛立ってしまう。呪い解除なんてずるだ。チートだ。そう思い口を挟むとそれもそうだなと言い出しっぺのウェルがうなずく。

 切り替えが早いとかじゃなくてウェルは私にそれをいわれたのがいやなんだろう。そう思いまた正規法で答えを探す二人を見てからキリーがもってきた異国の酒をラッパ飲みする。

 勿論二人がこっちを見て何か言いたげな表情をしているがそんなの無視だ。無視。



 まぁ、そんなこんなで冒頭に戻る。本を渡して三十分ほどたつが、まだ無理みたいで二回ノック惜しいななんて思いながら待つ。



 そろそろ一時間くらい経っているのではないだろうか。また目的の二割は毎年の様に達成できないなぁなんて思いながらこのままだと目的の八割のほう。酒飲んで語りたいだけも達成できてないから結局この集まりは何のためにやっているのだろうと思ってしまう。


「おーい」


 そう声をかけると二人が何だとこちらに顔を向ける。


「酒飲もうよー」


 そういってまだお酒が入ってる瓶を二人に見せる。だが反応が悪い。


「だが、この本のほうも気になるし」

「あと、ちょっとだから終わるまでちょっと待ってくれ」


 三十分前にもこの台詞聞いたなぁなんて思いながら「そっか」と返事してそっぽ向いた。我ながら子供っぽいなと思うがこのために一年生きてると言っても過言ではないのだ。いや、嘘だが。

 一年ぶりの飲み会なのにこれかなんて考えた後去年もこれだったことを思い出して、しかも去年は私とウェルが逆だった何て思い出して一人気まずくなりながら去年は結局どうしたんだっけなんて思い返す。


「……あと、十分でとけなかったら強制的に呪い解除するからー」


 そう宣言した瞬間ウェルが明らかに人を殺せそうな目で睨んでき、その上でまた誰か殺せそうな声であ? といつもと昔の面倒くさい頃のウェル、というかほぼ本性が見えてる状態になっておりおっかねー何て思いながら酒を飲む。


「いやー去年のキリーの気持ちが凄くわかるわ」

「やっ分かったかって思ったけど俺にこいつ押し付けるのは止めてほしいわ」

「キリーかまうな、ネタバレされるのはしゃくだ」

「……おー」


 簡単に私達で兄弟だとかに例えるならキリーはノリのいいだけのただのお兄さんタイプ、私とウェルが双子でどっちもこっちが上って言うタイプだ。その上でどちらもが勝負事が好きだ。

 キリーはこんな遊びに誘ってきたが去年のを見習っての行動だろう。そしてこんな状況になるとは思ってなかっただろう。


 去年。ウェルと私で星屑祭でやってる格闘大会で勝ったほうが勝ちという何とも馬鹿げたことをやった。結果決勝戦で戦うという何とも筋書き通りの状態に陥り、引き分けになった。ウェルが魔法具バンバン使って、私は呪文だとか色々使って、結果時間切れで同率一位。

 それに対して主にウェルが面倒くさいことになった。問答無用で私に食って掛かってき、酒の瓶とかが割れ、今思い出すと凄いはずかしいが酒が割れたことに対して私が怒り私も本気になった。

 さすがにヤバいと思ったのかキリーが強制終了させた。簡単に言えば、呪いをかけられた。それで終わった。後になって二人でキリーと相手に謝って終わりになった。

 正当な王族の子にけんか売るなんて馬鹿なこと私も馬鹿なことやるななんて思いながら、残り七分かなんて思った。


「キリー。これに陣は書かれてないんだよな」

「あぁ。どうせピビは呪文のほうが得意だしな」

「……ようやくこれを使う時が来たか」

「は?」


 何を言ってるんだと内心思いながらウェルのほうを見る。キリーもそう思ったのだろう。変な声を出してる。

 すると、やけにばかでかいカエルみたいな物を取り出した。


「これはな、これを使用した物体が覚えてる音を喋ってくれるんだ」

「……すごいな」

「……」


 どしよう。三回ノックてのもばれるだろうしそれどころかどんな呪文を使ったのかもばれるのだ。又茎にしてない封を装いながらそう考えてるとウェルがこちらをにやりと見てくる。

 うざい。


「じゃあ、使うぞ」

「おう」


 負けか。そう思い酒をまたラッパ飲みした。目の端に魔法具を押し付けるウェルが見えた。あと、一分だったのにな。


「再生します。『おう』『じゃあ、使うぞ』『すごいな』『これはな、これをし』以上です。」

「は?」

「え?」

「あ?」


 くやしいななんて思ってたのにいきなり聞こえてきた言葉が先ほどの会話で、しかも途中で切れていてどういうことだなんて思う。

 ウェルも驚いたような顔をしててまたどういうことだなんて思う。


「なにこれ」

「……しるか」


 思わず呟くとキリーが答える。そうすると、ウェルがあ何か思い出したような表情になる。それにどうしたんだと二人でウェルのほうを見ると凄い赤い顔に成っていた。


「……………だった」

「え?」

「試作品だったって言ったんだよ!」


 聞こえなかったので聞き返すと切れられた。理不尽な何て思って試作品だったのかなんて思う。そして、聞いてもいないけどその魔法具がどういう物か言ってくる。


「まだ、試作品でそれも三回目だから二十文字しか喋れないんだ。しかもだ、前の二回目のやつ何て、雑音まで張ってたんだぞ。この魔法具を置く音とか、隣の部屋とか、俺が聞こえない音まで拾ったりしたんだ」

「へー……。それより酒飲めば?」

「……そうする」

「……俺も」


 三人で凄い微妙な空気の中飲み始め、ウェルがやけに早いペースで飲む。一番早くつぶれるななんて思いながら本を取りにいき三回ノックする。

 その様子を見た二人が嘘だろみたいな顔をする。


「残念」

「……だな」

「お? 言い返すのも面倒か」

「どうとでも思っとけ」

「ウェル、もっと度数低いのにしとけ。ゲロは掃除するきねぇぞ」

「私もしないから」


 そんなくだらない会話をしながら来年はどうするか何て考えて、それを考えるのはキリーに任せようと一人笑った。その瞬間の大きな音がして一番大きい花火があがったんだななんて思って、キリーとウェルがやけにびっくりしてるのを見てまた呑気に笑った。

「[http://and.noor.jp/e/poa/]まぼろしの秋」様より題名お借り

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