19.淋しいという感情
また、しばらくの沈黙の後に、
彼女は言った。
「じゃぁ、今度は本当にいきますね。」
彼女は、
俺が少し変化したのを、
ちゃんと確認できて安心したかのように、
別れの言葉を告げる。
まだ何にも話してねぇのに!?
「えっ・・・。」
蚊の鳴くような声が出た。
ふいに出た、
逆を言えば、
やっと出てきた一言が、
驚いた時によく発するありきたりな言葉だなんて、
俺としたことが、
なんだか情けねぇよ・・・。
そんな情けない気持ちと同時に、
俺の中に淋しいという気持ちが現れた。
これで話す時間終わりかよ。
もう少し話したいのに。
何か、男女が会ったら、
話すこといっぱいあんだろ!?
っていうか、
いつも話してるじゃん、俺!
女と話すのなんて、
初めてじゃねぇのに、
何でこんなに緊張しねぇといけねえんだよ!
いつもと違う自分に、
何だかイライラしてきた。
なんでこんなにテンパッてんだ?
でも俺のそんな気持ちとは裏腹に、
彼女は何事もなく去っていこうとする。
「それじゃぁ・・・。」
彼女は軽く会釈をして、
歩き出そうとした。
もう俺のほうは見ないで、
自分が進む方向へと振り向く。
その態度が、
さらに俺を淋しくさせる。
俺のことはまるで気にも留めてないみたいだ。
今までの女なら・・・。
つまり、俺に気がある女なら、
「この後、飲みにいかない?」
とか、ありきたりな誘い方で、
絶対に俺を誘ってくるからだ。
つぅか、
そんな女ばっかだったけど。
なのに、彼女にそれがないということは、
俺にはソノ気がないということだ。
それが何だか悔しい。
そして淋しい。
そんな事を考えている間にも、
彼女は俺から離れていく。
一歩、一歩。
俺たちの距離は開いていく。
それが嫌だと思った瞬間、
何かが俺の背中を押した。