17.やっと見つけた
彼女は俺の呼びかけに反応し、
俺のほうに振り向いた。
その瞬間に、
彼女と俺の視線が合う。
彼女のまっすぐな曇りのない瞳。
俺は何だか、
その瞳を見ることができず、
視線を、
ふい、
と、そらした。
きっとこいつは、
さっきのように、
正しいことは正しいこと、
悪いことは悪いことだと、
毅然として生きてきたに違いない。
俺は何だか自分が、
彼女とは対称的な生き方をしていることを、
マジマジと見せ付けられてるみたいで、
その瞳を直視することができずにいた。
なのに、
そらしたことに対して、
なぜか罪悪感と後悔を感じる。
きっと変に思ってる。
俺も・・・せっかく話せる場面なのに・・・。
このモヤモヤした感覚は何だ?
短くて長いような沈黙。
呼び止めたのはいいが、
何も話せない。
通りの真ん中に、いい大人が二人、
何もせずにつったっているだけなんて、
奇妙な光景だ。
沈黙を破ったのは彼女のほうだった。
「よかったですね。」
え?
一瞬、何のことかわかんなくて、
俺は無言で彼女を見た。
彼女は優しく微笑んでいた。
そして、言葉を続けた。
「理不尽に罪をきせられなくて。」
ああ、そのことか。
さっきの冤罪未遂のこと。
でも、それは・・・。
あんたが味方してくれたから・・・。
心では簡単に言えるのに、
体の表側には出てこない。
人に感謝するのなんて、
俺の人生にあんまりないことだから、
どう表現したらいいのかわかんねぇ。
俺は、恥ずかしくなって、
また目をそらしてしまった。